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経営方針
トップメッセージ
取締役兼代表執行役社長
千田 哲也
「お客さまの人生を保険の力でお守りする」
2020年1月6日に代表執行役社長に就任して以来、2年以上が経ちました。その間、当社の募集品質に係る諸問題に真摯に向き合い、お客さまの信頼を回復することに尽力してきました。
信頼回復に全力で取り組みながら、企業風土改革に魂を入れて取り組み、全社員で会社を変革させるのだという強い決意を抱いたのが就任1年目です。
就任2年目に入り、新たな中期経営計画(2021年度~2025年度)を策定した際には企業風土や働き方の改革を土台に据えたうえで、お客さまから真に信頼される企業へと「再生」すること、そしてお客さま体験価値(CX(注1))の向上や社会課題の解決への貢献を通じて「持続的成長」を目指す方針を打ち出し、さまざまな取り組みを行ってきました。
かんぽ生命がより多くのお客さまに信頼され、選ばれる会社であるためには、その時代、その地域の社会的な課題に真剣に向き合い、行動することが大切です。すべての皆さまに寄り添って人生を豊かにすることが、私たちの究極的な目的です。
その目的を果たすためには、「かんぽ生命の存在意義」を社員全員が共有し、お客さまに広く認めていただくことが重要です。私は社会課題の解決への貢献こそ、かんぽ生命が創業以来大切にしてきた存在意義だと考えています。
当社の前身である簡易生命保険が生まれた1916年当時、生命保険は富裕層の方々を除き加入が難しいものでした。それを小口化し、郵便局という身近なネットワークを通じて基礎的な保障を広めたいという思いが、国民の文化にまで生命保険が根付くきっかけとなりました。また、高度経済成長期にはかんぽの学資保険が、多くの家庭のお子さまの高等教育や学びの支えとなりました。このように我々はすべての国民の皆さまと誠実に向き合い、その時代の社会的な課題に向き合ってきたのです。
我々の掲げる「お客さまから信頼され、選ばれ続けることで、お客さまの人生を保険の力でお守りする」という社会的使命(パーパス)を社員全員が共有し、果たしていくことで、社会に貢献していきたいと考えています。
(注1)Customer Experience(カスタマー・エクスペリエンス)の略。商品やサービスの価格や性能といった機能的な価値だけではなく、保険加入前から加入後のアフターフォロー、保険金支払までのプロセスすべてを通じてもたらされる満足感などの感情的・心理的な価値も含めた、お客さまが体験されるすべての価値。
お客さまにとってより身近な存在となるために
中期経営計画に掲げる「再生」への取り組みとして、2022年度から「新しいかんぽ営業体制」を構築し、日本郵便からコンサルタント(主にお客さまのお宅などを訪問して活動する社員)など約13,000人の社員が当社に新たに加わりました。
「新しいかんぽ営業体制」には大きく2つの特色があります。
ひとつはコンサルタントと郵便局窓口の役割の明確化です。コンサルタントは高い専門性と機動力を活かした生命保険のプロフェッショナルとして、生命保険のご提案とアフターフォローに専念します。一方、郵便局窓口は幅広い金融商品をご提案し多様なお客さまのニーズにお応えしていくことで、日本郵政グループが一体となってお客さまに専門性と幅広さを兼ね備えた総合的なコンサルティングサービスを提供します。
もうひとつはお客さま担当制の導入です。保険という商品はお客さまの人生における長いお付き合いを前提としたものです。その期間には保障面のみならず、育児や介護、相続といったライフサイクル上のさまざまな悩みが浮かび上がることでしょう。お客さま担当制を導入することで、専門的な知識を持った社員がお客さま一人ひとりのご相談に応じ、より質の高い細やかなアフターフォローを実現します。
お客さまと接する社員はいわば「地域や人生の支えとなり、新たな光を見出す」存在です。そうした意味でも、かんぽ生命の競争力を高める最も大事な要素が人材だと思っています。
日本郵便から加わったコンサルタントは、従前よりお客さまとの接点が厚く、お客さまとの対話を通じて必要とされているニーズを見出すことに喜びを感じています。CXの向上を自然と行うことができる社員が今回さらにかんぽ生命に加わったことで、会社全体の意識改革につながるものと期待しています。
「かんぽ営業の目指す世界観」の共有
「新しいかんぽ営業体制」では、日本郵政グループ全体でお客さまの多様なニーズに対応するため、「かんぽ営業の目指す世界観」を全社員が共有することが大切です。「かんぽ営業の目指す世界観」とは、全社一丸となってかんぽ生命が「再生」に向かうべく、「マーケットの成長」、「人材の成長」、そして、それを支える「マネジメントの成長」を通じ、会社の成長を実現することです。
「どうすればお客さまに喜んでいただけるか」、「どうすればお客さまの信頼を得られるか」を考え、行動することがマーケット戦略の出発点であり、それによりお客さまの喜び、信頼を拡大することが「マーケットの成長」につながります。
また、「人材の成長」については、実体験の積み重ねが何より重要であることは言うまでもありません。会社が社員一人ひとりに寄り添い、上司との対話のなかで着実に社員の成長を実現していきます。お客さまにご対応するうえでは、保険会社としての金融の知識に加え、社会的な問題にもなっている介護や相続、子育てなどさまざまな悩みをお持ちのお客さまのご相談にのることができる専門的な知識も必要です。そういったお客さまの人生を支える力、寄り添う力を伸ばしていきたいと思います。
そして、この社員一人ひとりの成長を支えるのがマネジメントの力です。「マネジメントの成長」のために必要な対話やコーチングなどの能力開発にも全力をあげていきたいと考えています。
「マーケット」、「人材」、「マネジメント」の3つの成長を目指すという世界観を日本郵便から加わったコンサルタントを含めた全社員が共有し、全員が同じ目線でお客さまに寄り添ってまいります。
新医療特約「もっとその日からプラス」を発売
「新しいかんぽ営業体制」の構築に加えて、事業基盤の強化に欠かせないのが、お客さまのニーズに応える商品開発です。
「人生100年時代」のなか、あらゆる世代のお客さまのニーズにお応えする保険サービスをさらに充実させていきたいと考えています。
2022年4月1日には、新医療特約「もっとその日からプラス」を発売しました。本商品はお客さまの医療保障ニーズの声にお応えしたもので、昨今の医療環境を踏まえ、短期の入院にも長期の入院にも、そして外来の手術にも手厚い保障を提供しています。
今後も低廉な保険料で手厚い保障を備えたいといったお客さまのご要望に的確に応える商品を提供していくとともに、高齢・中高年層の保障等のニーズに応える商品の拡充や、健康寿命延伸に貢献する商品の研究開発も進めてまいります。
お客さまの利便性やサービス向上のための取り組み
中期経営計画では、「再生」とともに「持続的成長」を大きな柱と位置づけています。この「持続的成長」を実現するため「お客さま体験価値(CX)の向上」と「社会課題の解決への貢献」に取り組んでいます。
「お客さま体験価値(CX)の向上」とは、すべてのお客さまにとって「かんぽ生命に入っていてよかった」と実感いただける体験を、契約からアフターフォロー、請求に至るあらゆる接点においてできる限り広げていくことです。
それによって、お客さまがまわりの方々に「かんぽ生命のサービスの良さ」をお伝えいただき、お勧めいただければ新たなお客さまとのつながりへと広げていくことができると思います。生命保険会社としての競争力を高めるためにも、とても重要な取り組みです。
お客さまの目線に立ち、ダイレクトチャネルやカスタマーセンター、郵便局の窓口、コンサルタントなどによる多様なチャネルを通じて、お客さまが気持ち良く、なおかつ簡単に利用できれば満足度をもっと向上させることができるはずです。さらには、その実現が私たちの業務の効率化や生産性の向上にもつながります。
特に、保険金をお受け取りいただくときが、お客さまに保険の重要性を実感していただける瞬間です。同時に、お客さまにとって辛いときでもありますので、そんなときにどこまでお客さまに寄り添えるかが、保険会社にとって一番大事なことであると考えています。
そのためにも、保険金請求の手続きをはじめとしたすべての手続きを簡素化することで、お客さま一人ひとりに寄り添ったサービスの提供を今後も進めてまいります。
持続可能な社会の実現に向けて貢献
「持続的成長」に向けたもうひとつ重要な観点として「サステナビリティ(持続可能性)を巡る社会課題の解決への貢献」があります。
かんぽ生命では、中期経営計画において、社会課題の解決への貢献をすることを目的にESG経営を推進することを掲げ、さまざまな取り組みを推進しております。
具体的には、ご高齢の皆さまにやさしく温かいサービス、健康寿命の延伸、Well-being(注2)の向上、カーボンニュートラル(注3)に向けた取り組み、ダイバーシティの推進といった取り組みを通じて、社会的使命を果たしていきたいと考えています。
とりわけ健康づくりに関しては、ラジオ体操は大事な資源として普及促進に長年努めてきました。ラジオ体操による健康効果の実証データを活用した商品の開発等、ラジオ体操の良さを広めながら保険サービスの価値を高めていきたいと考えています。
今後も国民のお客さま一人ひとりの悩みに真摯に向き合い、社会課題の解決というかんぽ生命の存在意義を発揮してまいります。
(注2)肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること。
(注3)「温室効果ガスの排出を全体としてゼロ」にすることであり、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量から、森林などによる吸収量を差し引いてゼロを達成すること。
社員一人ひとりが主体的に考え行動する企業風土の実現
会社の「再生」と「持続的成長」のための土台となるのが「企業風土改革」です。会社の成長は社員一人ひとりの成長と全員の力の結集があって初めて実現できるものです。社員が前向きに業務に取り組み成長することが、ひいてはお客さまサービスの向上や会社の成長につながっていきます。
企業風土改革を実現するには、まずは「経営ビジョンの共有とコミュニケーション改革」が重要であると考えます。その目的は、「経営と社員の信頼感、一体感」をつくることにあります。2021年度は、経営層と全社員との間で意見交換を複数回にわたり実施しました。回を重ねるたびに互いへの関心が増し、仕事への自信も高まるといった相乗効果が生まれています。
社員も上司から言われるままに仕事をする職場では、主体性は生まれません。それぞれの社員が責任と権限を持つことが大事です。たとえば仕事をプロジェクト的に見直し、少人数のチームで遂行するなどして、主体性を重視した働き方に変えていきたいと考えています。
社員の成長を支えるには、マネジメント層と社員との対話や互いのリスペクトも不可欠です。上司と部下がお互いにリスペクトできる関係にならない限り、良い対話は生まれず、本当の意味でのチームワークになりません。もちろん、人間ですから良い面も悪い面もあるでしょうが、なるべく良い面に意識を向けて対話することで、相手は「頑張ってみよう」と励まされると思うのです。
また、社員一人ひとりが成長を感じられることが重要であり、加えて人材を育てるうえでは、管理者のマネジメント力の強化も重要であります。積極的に行動し、自ら問題を提起できる社員を前向きに評価することで、社員一人ひとりが主体的に考え行動する会社を実現していきます。
2022年度は、社員を積極的にほめる制度をつくるとともに行動やスキルの「見える化」を通じたマネジメントシステムを導入します。あわせて社員がマネジメント層に対し自由に意見が言えるよう互いの存在を尊重し合う職場環境にしていくことが肝要と考えます。
お客さまに信頼され、選ばれる会社であるために
かんぽ生命の経営理念は「いつでもそばにいる。どこにいても支える。すべての人生を、守り続けたい。」です。
「お客さまの人生を保険の力でお守りする」ことを社会的使命として、社員一人ひとりがお客さまのお役に立てるよう自立的・主体的に行動する会社づくりを推し進めています。
お客さまや株主の皆さま、社員や地域の皆さまなど、さまざまなステークホルダーの皆さまの思いやご意見をしっかり受け止め、より多くの方々に愛される会社として企業価値の向上を目指してまいります。これからのかんぽ生命にご期待をお寄せいただきますよう、心よりお願い申し上げます。