個人所得税に関して大幅な見直しが行われた税制改正。中でも基礎控除と給与所得控除の一部引き上げは、多くの人にとって減税となる。
「概算として、給与年収2,545万円までの人なら2万円〜4万円の減税です。それで消費が促され、経済が活性化するといいですね」と久世氏は期待する。(以下「給与年収」と記載の場合、他の収入はないものとして説明。)
所得税額は年間の収入を基に計算される。概要を述べると、さまざまな収入からまず必要経費などを引いて合計所得金額を算出。そこから各種の所得控除を引き、そうして求めた金額に対して、総合課税・分離課税ごとの税率を掛ける。そして、税額控除を引いて納税額が決まる。
会社員の場合、前記の必要経費に相当するのが給与所得控除。そして、各種所得控除の土台として広く適用されるのが基礎控除。この2つが低〜中所得者を中心に引き上げになった。(図「A」参照)
改正で特に目を引くのは、所得税がかかり始めるボーダーライン(給与所得控除と基礎控除の合計金額)が上がり、給与年収が160万円までなら所得税が課されなくなった点だ。税金の「年収の壁」が103万円から160万円に移動したのだ。 「昔は103万円の壁を気にして就労時間を調整していた人が多かったのですが、17年に配偶者特別控除が拡充されてからは、社会保険の『年収の壁』※1のほうが重要視されています。6月13日には年金制度改革法が成立し、106万円の壁が撤廃されるとともに社会保険の加入対象者が広がりますので、その動き※2と併せて考えたいですね。社会保険料の負担が生じても労働時間を増やしたいと思っている従業員がいたら、『税金はかからないから』と背中を押す材料にもなります」
なお、図「A」の基礎控除が適用されるのは25年・26年の2年間で、27年以後は給与年収200万円〜2,545万円までは一律58万円となる。一方、給与所得控除の引き上げは恒久的な措置。また、今年(25年)中の源泉徴収は従来の税額表で行い、改正による減税分との差額は年末調整で精算することになる。
「年末調整は経理を担当する方の仕事ですが、手間のかかる作業になりますので、社長からひと言『ご苦労さま』と声をかけてあげるのもよいかもしれません」