そして3つ目は「65歳超雇用推進助成金」の「高年齢者無期雇用転換コース」。(表「C」参照)
50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を、無期雇用に転換した場合に、1人当たり30万円、1事業所10人まで受給できる。
「この助成金は、正社員化までは求めていません。雇用契約を有期から無期に変更するだけで受給できます。賃金を上げることも、賞与や退職金を支払うことも条件ではありませんから、取り組みやすいですね」
人手不足の中、高年齢のパートタイマーに頼る企業も多いだろう。無期契約に転換することで、その人たちのモチベーションが高まることが期待できる。また、契約社員の5年ルール※4により無期転換が予想される労働者を、早めに転換することでも助成金が受給できる。そして、無期転換後は定年まで雇用し、仮に60歳定年の会社なら、定年後は希望者全員の65歳までの継続雇用に移行することで対応できる。
「とても使い勝手の良い助成金ですが、気をつけたいのは無期転換の6カ月前から3カ月前までに所定の計画書を提出しなければならない点です。この計画書の作成は難しいので、執行機関の(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構の都道府県支部に事前に相談するようにしましょう」
- 有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申し込みにより無期労働契約に転換される制度。
伊藤氏は、厚生労働省の助成金が魅力的な理由のひとつに、利益を単純に押し上げてくれる点をあげる。
「例えば50万円の助成金を受給するとして、同じ金額だけ利益を増やすには、経常利益率5%の会社なら1,000万円の売り上げ増が必要になります。こう考えると、助成金は、財務健全化を図るための手段ともいえますね」