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Vol.189インターン競争の時代。

中小企業が採用で勝つための視点と方法。

 学生が在学中に企業などで就業を体験するインターンシップ。そのルールが2022年に変更され(後述)、大企業はインターンシップの活用を積極化しています。現在の新卒採用の状況を踏まえ、インターンシップの導入を検討している経営者に向け、取り組み方や運用方法について採用コンサルタントの谷出正直氏からアドバイスしてもらいました。

「中小企業ならではの魅力を訴えたい」と語る谷出氏

新卒採用・就職活動の潮流の変化。

 谷出氏は、新卒採用・就職活動(就活)の現状について、2つの大きな変化を認識してほしいと前置きする。
「ひとつは、企業は学生から選ばれる立場になっていること。もうひとつは、就活の流動化です」
 前者は理解しやすいだろう。人手不足の状況から、新卒市場も売り手優位になっている。一方、後者については説明が必要だ。
「昔は、経団連が定めた就活解禁日に合わせて企業も学生も一斉に動いていました。ところが、14年ごろからインターンシップなど解禁前活動が盛んになり、就活の実質的な開始時期が早まって、学生の活動が早期化、分散化しているのです。最近は学部の1・2年次から就活の準備を始める学生が増えています」
 また、学生が活用するツールも多様化している。以前は就活サイトを誰もが見ていたが、今はスカウト型サイト※1や就活エージェント※2、SNSなど多岐にわたる。
「企業としては、学生へアプローチしにくくなっていますが、学生の視点から見れば良い環境変化ではないでしょうか。昔は、就活解禁後の数カ月で人生の進路を決めなければなりませんでしたが、今は早い段階から自分のキャリアを考え、企業を探すことができるようになっています。そのような、しっかりと考えて会社を選ぼうとしている学生に働きかければ、優れた人材を獲得できるかもしれません。大手企業にこだわっていない就活生も4割程度いますしね※3

  • 学生が自己PRを登録し、それを企業が見てオファーを出す形式のサイト。
  • 新卒の人材紹介。
  • 「マイナビ 2026年卒大学生就職意識調査」(2025年4月)より。

インターンシップへの取り組み方法を指南。

学生のキャリア形成支援活動(概要) 画像を拡大する
学生のキャリア形成支援活動(概要)

 ここでインターンシップのルール変更について解説しよう。
 従来、企業が就活解禁日より前に行った活動で得た学生の情報は、採用活動※4に使えないとされていた。しかしルールを守らない企業も多く、実態を後追いするかたちで政府は「三省合意」※5を改正。その際、それまでインターンシップの名でさまざまな活動がひとくくりにされていたところ、4つのタイプに区分けし、タイプ3・4だけをインターンシップとよぶことにした(右表参照)。その上で、タイプ3・4については、参加した学生の情報を採用活動に活用できるようにした。
「この改正でお墨付きが得られたので、大企業はインターンシップに力を入れ始めています。ただし、新卒採用を行う企業のうちタイプ3・4を実施するのはまだ2割程度と推測されるので、中小企業が取り組めば注目されると思います」
 そこで課題となるのがその内容。企業は選ばれる立場になっているため、学生が選びたいと思う理由、志望の動機をつくるのがインターンシップの第一の目的となる。
「それには、実際の業務を体験させるのが近道です。その際、その業務がなぜ必要なのか、どう役立つのかを説明し、仕事の意味が腹落ちするようにしましょう。そして、指導する社員から、何が面白くてこの仕事をしているのか、仕事のやりがいを語ってもらいましょう」
 また、お客さま扱いしないことも大事だという。採用がゴールではなく、入社後に定着し、活躍してもらうことがねらいなので、飾らずに、自社の現実の姿を見せるようにしよう。
 ただし、中小企業は知名度が低く、インターンシップを実施しても学生の目に留まらない懸念がある。
「地方の企業の場合は、地元の大学などと連携を密にし、紹介してもらえる関係を積極的に築きましょう。難しいのは大都市圏で、学校には企業から募集が殺到するので埋もれてしまいます。そこで、前段階としてタイプ1のオープン・カンパニーをオンラインで開催し、学生との接点が幅広く生まれるようにします。そして、自社の特徴や強みを打ち出し、加えて社長自身が将来のビジョンを語り、会社の魅力を伝えましょう。もし予算に余裕があるなら、スカウト型サイトで有望な学生にアプローチしてもいいかもしれません」
 そして、いずれの段階でも重要になるのが社長の存在だ。中小企業は社長が会社の文化や社風をつくっているので、就活生が自分の価値観と合う会社かを知るためには、社長と接するのが最善の方法になる。
「職場体験では、社長と同行して得意先や現場を回り、社内会議にも同席してもらうのが良いでしょう。『社長の夢の実現を手助けしたくて入社した』という人もいますよ」

  • 就活解禁日以降に行う広報活動・採用選考活動。
  • 文部科学省・厚生労働省・経済産業省による「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」。

27年3月卒業生の獲得にもまだ間に合う。

 さて、インターンシップの実施時期だが、4年制大学の学部生の場合は3・4年次の長期休暇期間中とされている。事実上は3年次の参加になるが、だとすると27年3月卒業生の就活には間に合わないだろうか。
「いや、大企業は夏休み中の実施が中心で、冬はあまり行わないので、その隙をついて今年の年末・年始に実施できます。帰省時期と重なるので、地方の企業はUターン志望の就活生をねらえます。自治体によっては、インターンシップに来るための交通費や宿泊費を補填する補助金を出しているケースがありますよ」
 また、地元企業のインターンシップのマッチングサイトやイベントを運営・開催している自治体もあるので、調べてみるのも良いだろう。

働きがいのある会社として著名な、
アメリカのZappos(ザッポス)社を視察時。

採用コンサルタント
谷出正直
TEL:090-8034-1946


いい睡眠、いい人生 ⑤昼寝のすすめ

眠気は1日に2回訪れる

 前々回(Vol.179掲載)、生物に備わっている「体内時計=サーカディアンリズム」について解説しました。このリズムにより、人間にとって一般的に眠りにくい時間帯は、脳が活発に働く10時ごろからお昼近くまでと、夕方18時〜22時ごろまでになります。
 反対に、最も眠くなる時間帯は昼の12時〜13時ごろと深夜の1時〜2時ごろ。つまり、24時間のうち眠気のピークが2回あり、そのひとつが昼過ぎに来るわけです。
 また、昼食も眠くなる要因です。食後に血糖値が上がり、それを下げるために分泌されるインスリンが眠気を誘います。昼に眠くなるのは当然の反応なのです。
 眠気がピークに達している時間帯は、脳のパフォーマンスが大きく低下します。できれば15分〜20分、短い昼寝をしましょう。浅い眠りのレム睡眠にはストレスを和らげる効果もあるので、午後の集中力が向上し、能率アップが図れます。

昼寝はコーヒーを飲んでから

 そこで、昼寝前の新しい習慣の提案。意外に感じるかもしれませんが、コーヒーを飲むことをおすすめします。
 コーヒーの良い香りには副交感神経を優位にして、気持ちをリラックスさせる効果があります。言い換えれば、催眠作用が期待できるということです。
 一方で、コーヒーに含まれているカフェインには、交感神経を刺激して眠気をなくす覚醒作用があります。
 コーヒーのアロマは嗅いだ瞬間からリラックス効果を生じさせますが、カフェインは摂取してから覚醒効果が出るまでに20分〜30分を要します。そこにはタイムラグが存在するので、この時間を昼寝に充てるわけです。起きた頃にはカフェインが効いてきて、すっきりと頭が冴えることでしょう。
 ただし、20分以上は眠らないようにしてください。これ以上寝てしまうと、眠りが深くなって目覚めが悪くなります。

昼寝前にコーヒーを飲む効果
アロマによる催眠作用→カフェインによる覚醒作用(20~30分) このタイムラグを覚醒に作用

監修=白濱龍太郎

医学博士、産業医。医療法人RESM(リズム)グループ理事長。これまで睡眠に悩む2万人以上の人を救ってきた。『ぐっすり眠る習慣』など著書多数。

  • 記事中に記載の法令や制度等は取材当時のもので、将来変更されることがあります。詳細につきましては、各専門家にご相談いただきますようお願いいたします。
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