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Vol.190障がい者の受け入れに挑む。

「障がい者雇用相談援助事業」を活用しよう。

 従業員※1が一定数以上の事業主に達成が義務づけられている障がい者の法定雇用率。未達成の企業に向けて、障がい者雇用の課題を解決するコンサルティングを無料※2で提供する「障害者雇用相談援助事業」(以下、援助事業)が2024年4月から始まっています。コンサルティングを行うのは都道府県労働局が認定する事業者。そこで、認定事業者の東京都ビジネスサービス株式会社に取材し、責任者の川口美喜総括部長に援助事業の内容やメリット、利用方法について聞きました。

プロフィット部門 総括部長
川口美喜氏
  • 常用雇用労働者。週の所定労働時間が20時間以上で、1年を超えて雇用される者(見込みを含む)。
  • コンサルティングを行う認定事業者に「障害者雇用相談援助助成金」を支給することで企業の支出をなくしている。

障がい者は貴重な戦力になる。

 障がい者の法定雇用率は現在2.5%。雇用の義務が課される障がい者の人数は下の「A」の算式により計算され、例えば従業員数80人の企業なら2人以上雇用する必要がある。(下表「B」参照)
 「この法定雇用率が、26年7月から2.7%にアップし、現在は対象外の従業員37.5人〜39.5人の企業も1人以上の障がい者を雇う義務が生じます」と川口氏は注意を促す。
 援助事業が始まった背景には、法定雇用率の上昇により未達企業の増加が懸念される問題もあるかもしれない。達成できない場合、従業員100人超の事業主からは、不足する障がい者1人につき月5万円の障害者雇用納付金が徴収される。
 「経営者の中には、『当社には難しいので納付金を支払うのも仕方がない』と考える方もいらっしゃいます。でも、それはもったいない。障がい者は、企業の取り組み方次第で、貴重な戦力となって活躍できるのです」

[A]障がい者雇用義務人数の計算方法、[B]偉業規模別、障がい者雇用義務人数 画像を拡大する
[A]障がい者雇用義務人数の計算方法、[B]偉業規模別、障がい者雇用義務人数

精神障がい者の採用に注目。

 認定事業者の東京都ビジネスサービスは、株式会社システナの特例子会社※3。86年、東京都が重度障がい者雇用のモデル企業として共同出資し設立された第三セクターだ。従業員約550名のうち、障がい者が2割超。アウトソーシング受託事業、ITサポート事業、さらに障がい者雇用の経験を生かした障がい者支援サービス事業を展開している。
 「ちょっと自慢話のようですが、特例子会社は親会社からの仕事を請け負うのが一般的なところ、当社は親会社に頼らない自主経営を行っており、その戦力として障がい者が活躍しています。そして、雇用している障がい者の中で精神障がいの人が約7割を占めるのも特徴的です」
 川口氏がこう強調するのには訳がある。障がいの種類は身体、知的、精神に分かれるが、そのうち身体と知的については働ける人の多くがすでに働いており、障がい者の採用市場で、特に大企業が多い大都市圏では取り合いの状態にある。一方、精神障がい者は、企業側が及び腰で、雇用がなかなか進まない。
 「それは無理もありません。身体障がい者なら補助する道具を用いたり、知的障がい者なら繰り返して行う業務を担ったりなど、働き方がイメージしやすいでしょう。ところが精神障がい者の場合は、どんな仕事を任せ、どう配慮すればいいか、見当を付けにくいのです。そのため精神障がい者の雇用が進んでおらず、比較的採用しやすい環境にあります。認定事業者は、障がい者の採用・雇用に習熟していますので、援助事業を活用して障がい者雇用を検討してみてはいかがでしょうか」

  • 障がい者に特別な配慮をした子会社で、そこに雇用される障がい者は親会社の雇用義務人数に算入される。

認定事業者が行うコンサルティング。

[C]援助事業によるコンサルティング 画像を拡大する
[C]援助事業によるコンサルティング

 援助事業は、右の「C」に記載するコンサルティングを無料で提供する。精神障がい者を採用する上では、特に❶❸❹がポイントになるという。
 「面談や研修を通じて、❶では経営陣に障がい者の戦力化を、❸では従業員に障がい者と働く上で配慮してほしいことを中心に理解していただきます。そして❹では職場を拝見し、障がい者が担える仕事を抽出します。例えば精神障がいのうち発達障がいの人は、集中力が高い反面、対人関係が苦手な場合があるので、本人だけで遂行できる業務を切り出せないか、といった視点で探します」
 同社が支援した中では、東京近郊に所在する工場の例がある。交通の便が悪いために人が集まらず、労働力不足で悩んでいたところ、清掃やリサイクルの業務を切り出すことで2名の障がい者を採用できた。
 「この工場では、当社が支援する以前は障がい者の採用にも苦戦していたのです。そこでハローワークの求人票に、採用前に職場実習ができることを加えました。障がい者の方は、自身が問題なく働けるか知りたいと思っていますから、入社前に職場実習ができることは応募の動機として重要なのです。これは❻に当たりますが、ちょっとした工夫が採用に効果的だったりします」
 このように、認定事業者は長年の経験に基づくノウハウを持つ。厚生労働省が公表する『障害者雇用相談援助事業 認定事業者一覧』で調べられるので、同名で検索してほしい。
 「認定事業者を選ぶ際には、地域に根ざした活動を行っているかがポイントになると思います。障がい者雇用は、採用がゴールではありません。職場への定着が最も重要です。そのためには、就労移行支援事業者※4など地域のサポート体制と密接に連携することが必要になりますから」
 なお、障がい者を雇用する際には下記のような助成金も活用できる。障がい者雇用が進んでいない企業は検討を始めてみても良いだろう。

  • 通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる障がい者を対象に、知識・技能の習得から就職後の定着まで一貫して支援する機関。
障がい者を雇入する際に活用できる主な公的助成制度(概要) 画像を拡大する
障がい者を雇入する際に活用できる主な公的助成制度(概要)

東京都第三セクター企業 東京都ビジネスサービス株式会社

東京都ビジネスサービス株式会社
〒169-0075 東京都新宿区高田馬場1-4-15-2F
TEL:03-5155-3325(サスティナビリティ推進課)
https://www.tokyotobs.co.jp/(代表HP)
https://sk-design.tokyotobs.co.jp/(障がい者雇用デザイン室HP)

  • 記事中に記載の法令や制度等は取材当時のもので、将来変更されることがあります。詳細につきましては、各専門家にご相談いただきますようお願いいたします。
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