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Vol.192所有と経営を分離する。

役員・従業員に託す事業承継のひとつの形。

 中小企業の事業承継が日本経済の課題といわれる現在。親族内に後継者がいない場合、社員(役員・従業員)による社内昇格が有力な手段とされ、承継形態の最多※1となっています。ところが社員の多くは保有する資産が乏しく、株式を買う資金を準備できません。そのため、社長に昇格しても、会社の支配権がないまま経営の実務を担うという中途半端な立場に立たされます。そこで今回、この問題を解決するひとつの方法として「所有と経営の分離」を紹介。株式会社タナベコンサルティング執行役員兼ホールディングス・グループ経営モデル研究会のリーダー・中須悟先生に詳しく聞きました。

  • 帝国データバンク『全国「後継者不在率」動向調査(2025年)』では、同族承継を上回りトップの36.1%(速報値)。
「HD・Gは成長の土台になります」と語る中須氏。

後継者に事業子会社を任せ、経営意欲を高める。

 大企業では一般的な「所有と経営の分離」。中小の同族企業の場合、多くは所有と経営が一致しているが、それをあえて明確に分離する組織形態にホールディングス・グループ【以下、HD・G】がある。経営者(オーナー)が純粋持ち株会社(ホールディングス【以下、HD】)を設立。株式を保有する力を背景にグループを統括し、事業を行う子会社は社員を昇格させて経営を委ねる※2
 「HD・Gは、本来は成長をめざすための組織形態ですが、社内昇格による事業承継の場合に、後継者がモチベーションを高めにくい問題を解決するためにも有効です」
 通常、株を保有しないまま社長に昇格すると、最終決定権をもてないために社内の求心力や取引先との交渉力が弱くなり、後継者は〝やりがい〟を感じにくくなる。
 「その点、HD・Gの子会社社長は、業務執行に当たって全権を握れます。しかも、会社を所有していないので、最終責任を負うことなく事業に集中できます。子会社社長という身軽で自立した地位に就くことで、モチベーションが高まるのです」
 中須氏がコンサルティングを行った中で、後継者の意欲を高め、成長に結びつけた事例を紹介しよう。
 1990年に印刷会社を創業したK氏。デザインや販売促進などへ事業を広げ、社員約200名、年商約100億円の企業に育て上げた。そして21年、HD・G体制に移行。K氏はオーナーとしてHDの会長を務め、7つの子会社には生え抜きの社員を昇格させて経営を任せている。
 「KさんにHD・Gを志向した理由を聞くと、『社員にも経営の醍醐味を味わってほしかったから』と言うのですね。自身が経営者として充実していたのは、社員が20人〜30人のころで、当時は全員の顔が見えたし、一体感も強かったと。その規模に会社を分けることで、子会社の社長には経営の面白さを体験させ、また、社員には『頑張れば社長になれる』という夢を与えました。その結果、人材が活性化し、組織も一枚岩になって、それぞれの事業がパワーを発揮できているのです」

  • 専門経営者を招く場合もある。
ホールディングス・グループをつくる際の典型的スキーム 画像を拡大する

ホールディングスは、グループ管理に徹する。

 K氏は、事業子会社の経営には口を出さないようにしているという。
 「それがHD・G経営の要諦です。事業遂行は子会社に任せ、HDは、グループ全体の理念を示し、各子会社の権限・責任を明確にし、それに基づいてグループを管理します。未来へ向けては、中長期の経営計画を練り、戦略的な投資を行います。そして年度の予算計画を立て、その実現に子会社が全力を傾けられるように、いわば〝手を離して目を離さない〟経営スタンスを徹底します」
 また、HDは、グループ全体の財産・債務をコントロールする役目を担う。不動産や設備を集中保有し、銀行借り入れも一括して行う。
 「そこで、HDには各子会社に共通する間接部門(経理・労務・総務)と、中長期的な視点で研究開発を行う部門を集めます。収入は、子会社からの配当、間接業務の受託手数料、不動産・設備の賃貸料、および運転資金の貸付利息となります」
 HD・Gを形成するに当たっては、主に2つの手法がある(上図を参照)。単一の会社の事業を分割してHDの下に子会社をつくる「新設分割」と、すでにグループ展開している場合に上にHDをつくる「株式移転」だ。
 「ただし実際は、事業の内容によって柔軟にスキームを設計します。例えば建設、物流、メディカルなどの許認可産業の場合、許認可を取り直すのは大変な手間なので、事業主体が変わらない株式移転を選択します。一方、不動産の保有が多い場合、HDがそのまま保有を継続できる新設分割を選択し、登録免許税や不動産取得税を節約するようにします」

オーナー家の相続の課題について。

 さて最後に、オーナー家の相続に関して付言しておこう。一般に、HDを設立すると相続税が低減する効果があるといわれる。
 「確かに、HD・G化は株価を抑制し、特にHDが一定規模以上※3になると株の評価額が大きく下がる場合があります。しかし、節税目的でHD・Gを志向するのは疑問です。本来は、事業を子会社化することでM&Aや多角化を機動的に行えるようにし、グループで成長や生き残りを図るのがHD・Gの目的ですから」
 そして、そもそも親族内に後継者がいないときに、HDの経営をどう承継していくかの問題が残る。
 「それは今後の課題ですね。ひとつの解決方法としては、HDのさらに上にオーナー家のファミリー会社をつくり、そこでグループ全体の在り方を議論して導いていくことが考えられます。例えば、サントリーがホールディングスの上に寿不動産※4というファミリー会社をつくっているのが参考になるかもしれません。その上で、HDの社長は子会社社長から抜擢したり、専門経営者を招いたりしても良いでしょうね」

  • 総資産額(簿価)15億円以上、従業員数35名超など。
  • サントリーホールディングスの親会社で、佐治家・鳥井家の人が主な株主となっている。
ホールディングス・グループ経営モデル研究会のHP。

ホールディングス・グループ経営モデル研究会
(株式会社タナベコンサルティング)
〒100-0005
東京都千代田区丸の内1-8-2 9F
TEL:03-6758-0073
https://www.tanabeconsulting.co.jp/

中須氏がHD・G経営について詳述した著書。

いい睡眠、いい人生 ⓺安眠のためのNG集

 睡眠の質を高め、ぐっすり眠るために、以下のような習慣は改めましょう。

寝る前の食事はNG

 血糖値が上がり、それを下げるためにインスリンが分泌されます。インスリンは眠気をもよおす作用がある一方、交感神経を刺激し、眠りが浅くなってしまいます。
 また、食事をしてすぐ寝ると、取り込まれたエネルギーが消費されずに、中性脂肪として体内にため込まれます。

水分のとり過ぎ、特にお酒はNG

 水分を制限する理由は単純で、トイレが近くなるからです。水分は夕食時にとり、寝る前にトイレに行きましょう。そして、アルコール(特にビール)は利尿作用があるので控えます。また、アルコールが睡眠中に分解されることで交感神経が優位になり、体も脳も休息しづらくなります。

お酒はNG

就寝直前の歯磨きはNG

 ブラシで歯茎が刺激されると、睡眠ホルモンのメラトニン(Vol.179掲載)の分泌量が減り、体内時計を狂わせてしまいます。歯磨きは、就寝1時間前に済ませるようにしましょう。

就寝直前の歯磨きはNG

テレビ、パソコン、スマホはNG

 画面から出るブルーライトが脳の松果体を刺激し、メラトニンの分泌を抑えてしまいます。就寝30分前になったらテレビを消し、またパソコンやスマホを見るのをやめましょう。

テレビ、パソコン、スマホはNG

靴下をはいて寝るのはNG

 冷え性だからと靴下をはいたまま寝る人がいます。確かに寝つきは良くなるのですが、体内の熱がうまく放出されないために、深部体温が下がりにくくなり、深睡眠(Vol.176掲載)に達するのを妨げてしまいます。電気毛布も同じ理由で、つけっぱなしにすると眠りが浅くなります。
 外から手足を温めるのではなく、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かるなど、血行を良くすることが大切です。

靴下をはいて寝るのはNG

寝る前のたばこはNG

 そもそも体に悪いたばこは、睡眠にも悪影響を及ぼします。ニコチンには覚醒作用があり、しかもその効果は約1時間持続するので寝つきが悪くなります。

監修=白濱龍太郎

医学博士、産業医。医療法人RESM(リズム)グループ理事長。これまで睡眠に悩む2万人以上の人を救ってきた。『ぐっすり眠る習慣』など著書多数。

  • 記事中に記載の法令や制度等は取材当時のもので、将来変更されることがあります。詳細につきましては、各専門家にご相談いただきますようお願いいたします。
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