健康診断結果を活用していますか?受けて終わりにしていませんか?
結果に安心した方にもドキッとした方にも知ってほしい健診値の見方について、わかりやすく解説します。
また、性・年代別に基準値範囲を超えてしまう人がどのくらいいるのか、基準値範囲を超えてしまうとどのようなリスクがあるのか、この機会に是非チェックしてみましょう。
血糖値とは、「血液中のブドウ糖の濃度」を指します。
食事をすると、食物中に含まれる炭水化物が分解され、ブドウ糖が小腸から吸収、血液中に入ります。これが「血糖値」です。
血糖値が上昇すると、すい臓から血糖を下げる働きを持つ「インスリン」が分泌され、ブドウ糖が細胞に取り込まれエネルギー源として使われます。
余ったブドウ糖は、空腹や運動のときのエネルギーの貯金としてグリコーゲンへ変換され、肝臓や筋肉に貯蔵、さらに脂肪としてもたくわえられ、血中の血糖値はまた下がっていきます。
インスリンの分泌量が不足(インスリン分泌低下)したり、インスリンの働きが悪くなる(インスリン抵抗性)などの要因で、血糖値が下がらないまま、高い状態が続くことを「高血糖」と呼びます。
高血糖が続くと糖尿病の発症が懸念されますが、糖尿病の診断には一般的に空腹時血糖とHbA1c(エイチビーエーワンシー)の値を使用します。
特定健診では、「空腹時血糖100mg/dL以上、HbA1c5.6〜6.4%」で特定保健指導、「空腹時血糖126mg/dL以上、HbA1c6.5%以上」で医療機関の受診が推奨されています。
空腹時血糖の年代別リスク分布(B~D判定(軽度異常以上)の割合)
HbA1c(NGSP)の年代別リスク分布(B~D判定(軽度異常以上)の割合)
高血糖の状態が慢性的に続くと、糖尿病を発症します。
また、血管壁に炎症を引き起こし動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞の原因となります。
高血糖の状態が続いて、合併症を引き起こし、四肢切断や失明に至ったり、腎不全が悪化して人工透析が欠かせなくなったりする危険性があります。糖尿病の診療日数や医療費総額の平均は、次の表のとおりです。
糖尿病の平均診療日数・医療費総額
| 診療日数 | 医療費総額 | |
|---|---|---|
| 入院 | 17.2日 | 99.2万円 |
| 外来 | 4.7日 | 5.3万円 |
また、糖尿病性網膜症※1、糖尿病性腎症※2、糖尿病性神経障害※3といった重大な合併症もあります。
人工透析には、週に3回ほど通院が必要で、1回につき4~5時間も時間を費やすことになります。
【参考文献】
【執筆者プロフィール】井林 雄太 (いばやし・ゆうた)
1984年生まれ、2008年大分大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務の傍ら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。
【ホームページ】
福岡ハートネット病院:https://heartnet-hp.jp/
2025.7.18 作成