すこやか健康ラボ

アルコールだけじゃない?肝臓の健康を保つために気をつけること

肝臓の役割とは?数値の見方や見直すべき生活習慣を解説!

写真イメージ

私たちの体の中で一番大きな臓器、それが「肝臓」です。
皆さんは、その働きや役割についてご存知でしょうか?

簡単にいうと、肝臓は食べたものをエネルギーに変換したり、アルコールなどの有害な物質を分解したり、また腸内での消化吸収に必要な胆汁を作るなどといった、人の体に欠かせない働きをしています。

ではここで、自分自身がどこまで「肝臓の健康を保つ生活習慣」ができているかをチェックしてみましょう!

肝臓の健康を保つ4つの生活習慣

  • 週に2日以上休肝日をつくる
  • おつまみに揚げ物など脂(あぶら)やカロリーが高いものを選ばない
  • 糖質の多い食品(ごはんやパン、甘いものなど)の摂りすぎに注意する
  • 必要以上に薬をのまない(不要な漢方薬・サプリなど)

皆さんはいくつ当てはまりましたか?
健康診断の結果報告書で、「AST(GOT)」や「ALT(GPT)」、「γGTP」という肝機能の検査項目を見たことがあるかもしれません。

これらは、肝臓や胆のう(胆道も含む)の細胞に含まれている酵素で、肝臓の状態を表す指標となっています。
肝臓や胆のうに炎症があると肝細胞が壊れてしまい、これらが血液中に漏れ出ることで数値が上昇してしまうのです。

肝機能検査の基準値の目安

  • AST(GOT):7~38 IU/L
  • ALT(GPT):4~44 IU/L
  • γ-GTP:男性 50~80 IU/L以下、女性 30 IU/L以下

こうした肝機能の数値は、血液検査で確認することができます。
基準値より高い数値の場合、肝炎や胆石症やアルコール性肝障害などが疑われます。
なかでもγGTPは特にアルコールに敏感で数値が上昇しやすい特徴があります。

とはいえ、肝臓の数値を悪化させるのは、飲酒(アルコール)だけではありません。
炭水化物や脂質を多く捕りすぎる、運動不足やストレス、睡眠不足など、日常生活の中で肝臓に負担をかける要因は多岐にわたります。

健康診断結果を多く見ている医師からみると、γ-GTPはそこまで高くなっていないけれどASTやALTの数値が高いという方も多くいらっしゃいます。
その原因となっているのは、やはり生活習慣なのです。

今日から実践できる!肝臓を健康に保つためのポイントとは?

写真イメージ

AST(GOT)、ALT(GPT)などの肝臓の数値(代謝マーカー)の悪化を防ぐためには、生活習慣の見直しがとても重要です。

一番身近ですぐに取り組める改善ポイントは、食事と睡眠です。
とはいえ、肝臓の機能を悪化させる代表格として、よく例にあげられるアルコール、油脂類や肉類といった高脂肪食さえ控えれば肝臓が健康になるというわけではありません。
食事の仕方、睡眠の質なども意識して改善をしていきましょう。

食事

脂質や炭水化物を多く含む物を食べると、中性脂肪の数値が上昇し、肥満にも繋がるという話を聞いたことがあるかもしれません。
加えて、意外と見落としがちなのが「早食い」の習慣です。

早食いは、食道や胃などの消化器系に大きな負担がかかり、ALT(GPT)の数値を高めてしまうことが知られています。
一定のペースでゆっくりと食事をすることで、肝臓への負担も軽減。
同時に数値を改善することが期待できます。

ちなみに、早食いが習慣化すると過食に繋がりやすく、肝臓に脂肪が異常に蓄積された状態(脂肪肝)に・・・。肝機能でもALT(GPT)が上昇しやすくなります。

このことは統計データでもあきらかで、人と比べて「食べる速度が速い」人は「食べる速度が遅い」人に比べて、ALT(GPT)の数値が異常値である割合が、なんと1.41倍も高くなっていました。

早食い × ALT(GPT)

早食い × ALT(GPT) 棒グラフ
  • 分析定義:「人と比べて食べるのが速い」への回答別に集団を区分し、翌年の健康診断における異常値*割合を算出(*人間ドック学会基準を参照)

早食いはもちろん、それに伴う過食は肥満や脂肪肝を引き起こし、日頃の運動不足や飲酒はそれらをさらに助長させます。
とにかく、適切な食事習慣!これこそが、健康な肝臓を維持するための秘訣なのです。

睡眠

十分な睡眠を取ることは、肝臓の機能を正常に保つためには必要不可欠。
睡眠不足は肝臓の負担を増やし、AST(GOT)の数値を上昇させる可能性があります。

睡眠時間が6時間未満の場合、肝脂肪の蓄積が増えてしまい糖尿病に繋がることも・・・。
睡眠が不足している状態では、食欲増進ホルモンの分泌量が多くなることも報告されています。

1日の睡眠時間が十分でない人は、しっかりと睡眠がとれている人に比べて、AST(GOT)が異常値である割合が、なんと1.34倍も高いという統計結果もあるほど、睡眠は肝臓の健康づくりにとって大切なポイントなのです。

睡眠 × AST(GOT)

睡眠 × AST(GOT) 棒グラフ
  • 分析定義:年間平均睡眠時間のレンジ(不足:〜5時間、適正:5時間〜8時間)別に集団を区分し、翌年の健康診断における異常値*割合を算出(*人間ドッグ学会基準を参照)

睡眠不足は、そもそも生活が不規則な状態。過食や飲酒(アルコール)に繋がりやすいだけでなく、肝機能に悪い影響を与えます。
家事や仕事で毎日忙しい!という方も上手に時間を割振り、睡眠時間を確保しましょう!

現役医師が解説!肝機能の不調を感じたら実践したい改善方法。「軽度異常」と「重度異常」とは?

健康診断などで肝機能の数値が異常に高いという結果がでた場合、多くは脂肪肝などが引き金になっているといえます。
一方、正常な数値から少し外れる程度であれば、日頃の生活習慣を見直すことで十分に改善できる可能性があります。

肝機能の数値の高さは、改善の可能性が見込める「軽度異常高値」と専門医の治療が必要なほど緊急性のある「重度異常高値」の2つに分類されます。

不調を見抜くのがとても難しく、「沈黙の臓器」として有名な肝臓。
数値が異常に高いことは、なんらかの不調を伝えるサインなのです。
元気で健康な肝臓づくりのためにも、自分自身がどちらのタイプに当てはまるのかを確認し、できることから予防・改善に取り組んでいきましょう!

あなたはどっち?軽度異常高値と重度異常高値

AST(GOT)とALT(GPT)が軽度異常高値(2桁)の場合

アルコール摂取を控えたり、無理のないダイエットと運動で体重を管理したりして肥満を解消することが重要です。
減量を促すサプリメントや薬を大量に摂ることで、肝臓が炎症を起こすことも。
栄養はもちろん、バランスの良い食事を心掛けましょう。

AST(GOT)、ALT(GPT)が異常高値(3桁以上)の場合

緊急性の高い数値です!速やかに病院を受診しましょう。

このような高い数値は、重度の肝臓の炎症を起こしている可能性大!
禁酒をしつつ、水分をしっかり摂ること。また過剰な運動は避けるようにしましょう。
食事は消化の良いものを。腹痛や倦怠感がある場合は無理に食事をせず安静が第一です。

独自の判断で肝機能に関するサプリメントなどを飲むことをすぐに止めて、一刻も早く医師に相談を。正しい指導を受けましょう。

【参考文献】

【執筆者プロフィール】井林 雄太 (いばやし・ゆうた)

1984年生まれ、2008年大分大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務の傍ら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。

【ホームページ】

福岡ハートネット病院:https://heartnet-hp.jp/

2025.11.17 作成