揚げたての唐揚げ、バターや牛乳を贅沢に使ったこだわりのパンケーキなど、思わず笑顔になってしまうほど美味しい食事は、ついつい沢山食べてしまいがち…。
気にせずに過ごしていると、いつの間にかお腹まわりが大きくなったという経験はありませんか?
こうした生活習慣を繰り返すことで増え続けるのが「中性脂肪」です。
中性脂肪の増加を防ぐ「血液サラサラ」のための生活習慣がどれほどできているか、ここでチェックしてみましょう!
中性脂肪は、糖質エネルギーの不足を補い、体を動かすエネルギー源です。
また、皮下脂肪になって体温を保持したり、内臓を衝撃から守るはたらきをしたり、私たちにとって必要な存在です。
その一方で、実はあることがきっかけで異常な中性脂肪値が悪役となって、私たちの健康をおびやかすこともあるのです。
中性脂肪の値が上昇する主な原因は、加齢により代謝が落ちること。
加えて、食べ過ぎ(特に糖質)や運動不足などの生活習慣も理由の一つです。
生活習慣の悪化で体内に中性脂肪がどんどん溜まっていくと、肥満やメタボリックシンドロームになる可能性が高くなり、いわゆる生活習慣病にかかる恐れもあるのです。
中性脂肪の基準値は一般的に50~149mg/dL。150mg/dL以上になると、脂質異常症のひとつである「高トリグリセライド血症」と呼ばれる状態になります。
逆に食事をきちんと摂れていない場合は30mg/dL未満「低トリグリセライド血症」となります。
今回は、実は怖い存在になり得る中性脂肪についてお話ししていきます。
中性脂肪を適切なレベルに保つためにもっとも重要とされるのが、バランスの取れた食事や適度な運動です。
まずは日常の中で取り組みやすいものから試してみましょう。
中性脂肪の値を下げる効果的な運動としておすすめしたいのは「有酸素運動」。
その中でも「息切れをせず、隣の人と話せる程度」の運動が目安になります。
代表的な例では、ウォーキングやジョギング、自転車、踏み台昇降などが効果的であるとされています。
このような運動を週150分以上続けることで、中性脂肪が平均で約13~15mg/dL程度下がることが報告されています。
いつもより歩数を少し増やすことや、座っている時間が長い方はこまめに立ち上がることも、中性脂肪の値を下げることに効果的です。
このことは統計データからもあきらかで、1日の目標歩数を達成していない人は、達成している人に比べて中性脂肪が異常値である割合が1.59倍高いことが分かりました。
運動 × 中性脂肪
現代人は実は意外にも歩いていない方が多いです。
具体的には、スマホを使った健康管理アプリなどで、10分間で歩ける歩数を約1,000歩とした場合、今何歩になっているかなど、自分なりの目安を作ってチェックしてみましょう。
血液中の余分な糖分や脂質は中性脂肪に置き換えられます。
肝臓に取り込まれてしまえば脂肪肝にもなり、また血流を悪くします。
少し呼吸が乱れる程度の有酸素運動をすることで、筋肉を含む細胞で中性脂肪を代謝させて数値を下げる、そんなイメージを持っておくとよいでしょう。
食事では、とにかく糖質や脂質を減らしたり、アルコールを減らしたりすることが最優先です。
食物繊維の多い野菜をしっかり食べることなど、食事の内容を見直すことも重要。
同時に「食べるスピード」を意識することも大切です。いわゆる「早食い」は、消化や栄養の吸収に大きな影響を与えます。
中性脂肪の値は、こうした代謝を乱すことでも上昇する可能性があるのです。
ゆっくり食べたくらいでそんなに変わらないだろうと思うかもしれませんが、「食べる速度が速い」人は「食べる速度が遅い」人に比べて、中性脂肪が異常値である割合が1.28倍高いことが分かりました。
「お腹いっぱい!」と満腹中枢が認識するには約15分かかります。とにかく時間をかけて、よく噛んで食べることが中性脂肪の値を下げる大きなポイントです。
早食い × 中性脂肪
早食いのように飲み込むように食べてしまうと、糖質や脂質を過剰に摂ってしまいかねません。
中性脂肪を上げないように一口30回以上はゆっくり噛んで食べるように心掛けましょう。
中性脂肪の値は高くても低くても、それぞれ改善すべき問題を抱えています。
高ければ食べ過ぎや運動不足の改善が必要になり、低ければ無理な食事制限や急激な運動を控えることが必要になるなど、改善のポイントもさまざまです。
ここでは、それぞれの値にとって、どの方法が改善に繋がるのかをお話しします。
「高トリグリセライド血症」とされ、メタボリックシンドロームの診断基準にも盛りこまれています。
エネルギー量の摂りすぎや、特に甘いものやアルコール・揚げ物などの摂りすぎは、中性脂肪の高値のきっかけになります。
1日の総カロリーは男性で2,100~2,700kcal、女性では1,700~2,400kcalとして、脂質は約25%程度、つまり約400~600kcal以下を目指してみましょう。
また、肥満の場合は減量を行うことで中性脂肪を下げることができます。
過度な食事制限をしている可能性があります。中性脂肪は摂りすぎると体脂肪として蓄えられて肥満を招きますが、摂らなさすぎるのも「るいそう(痩せのこと)」といって悪影響です。
人や動物にとって重要なエネルギー源であり、脂溶性ビタミンや必須脂肪酸の吸収にも不可欠な中性脂肪。
バランスの良い食事を意識しましょう。
【参考文献】
【執筆者プロフィール】井林 雄太 (いばやし・ゆうた)
1984年生まれ、2008年大分大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務の傍ら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。
【ホームページ】
福岡ハートネット病院:https://heartnet-hp.jp/
2025.6.10 作成