食事をしたあと、うっかり眠くなってしまうことはありませんか?
それは「血糖値」が原因。
まずは日常の暮らしの中でどれだけ血糖値をコントロールすることができているか、ポイントになる生活習慣をチェックしてみましょう!
血糖値をコントロールする生活習慣、皆さんはいくつ当てはまりましたか?
さて血糖値とは、「血液中のブドウ糖の濃度」を指します。グルコースとも呼ばれます。
食事をすると、食物中に含まれる炭水化物が分解され、消化吸収されるとブドウ糖となって小腸から吸収、そして血液の中に入ります。
これが「血糖値」です。
血糖値が上昇すると、すい臓から血糖を下げるはたらきを持つ「インスリン」というホルモンが分泌され、ブドウ糖が細胞に取り込まれ、最終的に私たちのエネルギー源として使われています。
インスリンの分泌量が不足したり、インスリンの働きが悪くなるなどがきっかけになり、血糖値が下がらないまま高い状態が続くことを「高血糖」といいます。
高血糖状態が続くと心配になるのが、糖尿病の発症。
一般的に、糖尿病の診断にはHbA1c(エイチビーエーワンシー)という値を使用しています。
高血糖は、空腹時血糖値が126 mg/dL以上、または食後2時間の血糖値が200 mg/dL以上である状態を指します。HbA1cでいえばおおよそ6.5%以上です。
食後の眠気を誘う血糖値。上昇する主な原因は、糖質の摂取量が多いことです。
さらに、運動不足、ストレスや睡眠不足などの生活習慣にも強く関連しています。
不規則になりがちな生活習慣がきっかけとなって、インスリンの作用は妨げられ、血糖値をほどよく調節する力を弱めてしまう可能性があるのです。
血糖値を下げるための重要なポイントは、バランスの取れた食事、定期的な運動、ストレス管理、十分な睡眠の4つの習慣。
言葉にするのは簡単ですが、いざ実行するとなると難しいなと感じる方も多いのではないでしょうか?
まずは「取り組みやすさ」に注目をして、できることからはじめてみましょう。
睡眠不足が必要以上に翌日の食欲を掻き立て、日中の活動意欲を減退させることなどから、血糖値と睡眠には深い関係があることが徐々に分かってきています。
このことは統計データからもあきらかで、なんと1日の睡眠時間が不足している人は、睡眠時間が適正な人に比べてHbA1cが異常値である割合が1.23倍高いことが分かりました。
寝不足や不規則な睡眠をされている方は、特に血糖値が悪くなる可能性があることをお忘れなく!
睡眠 × HbA1c
夜勤や不規則な生活が多い方はそれだけで血糖に悪い影響を与えやすい状態ですが、生活習慣の中でも特に食事が乱れやすくなってしまいます。
日頃、自分がどれだけ寝ているかなども生活習慣改善のチェック項目に入れておくと良いでしょう。
家事や仕事で忙しく過ごしていると、どうしても「飲み込むように早食い」をしてしまう・・・という方は意外と多いのではないでしょうか?
よく噛まずに食事をすると満腹中枢が刺激されず、ただただ食べ過ぎてしまうこともあるかと思います。
そして、何よりも「早食い」をすると血糖値が急激に上昇しやすくなります。
健康な人の場合、食後2時間で血糖値は140mg/dL未満に下がっていきますが、血糖値が低下せず140mg/dL以上の高い値が続く状態を「食後高血糖」と呼びます。
この状態が長く続くと、空腹時高血糖(126mg/dL以上)となるリスクが高まってしまうのです。
このことは統計データからもあきらかで、人と比べて「食べる速度が速い」人は「食べる速度が遅い」人に比べて、空腹時血糖が異常値である割合が1.22倍高いことが分かりました。
早食い × 空腹時血糖
飲み込むように食べてしまう「早食い」の習慣を改善して、とにかくよく噛んで食べることを意識しましょう。
そうすることで、満腹中枢もしっかり刺激され、血糖値も上がりにくくなります。
食べる順番はもちろんですが、食べるスピードも大切。いつもの食事を見直してみましょう。
糖尿病の診断でよく使われているHbA1cという検査値、健康診断でも目にする機会があるかもしれません。
HbA1c=血液中のヘモグロビンのうち、糖と結合しているものの割合を測定した値の正常範囲は4.6~6.2%で、性別や年齢によって正常値は異なります。
目安として5.6%以上の場合には、食後に血糖値が急上昇する「かくれ糖尿病」、さらに6.5%以上の場合はすでに糖尿病の可能性があるのです。
食後に血糖値が急上昇する糖尿病予備軍の可能性があります。空腹時の血糖値が110~125mg/dL内の方は該当することが多いでしょう。
食事では、血糖値の上昇を緩やかにするために、食物繊維(葉野菜や海藻、きのこ類)を先に食べることやゆっくりよく噛んで食べることが大切です。
運動時間の目安としては、週に150分以上を目標にしましょう。1日30分以上の有酸素運動を5日間、可能であれば毎日続けることをおすすめします。
食後の血糖値だけではなく、空腹時血糖値も高い(126mg/dL以上)場合は、糖尿病の可能性が非常に高いです。必ず病院を受診しましょう。
改善方法は、食事療法と運動療法が基本です。
適正なエネルギー摂取量を守りながら、栄養バランスを考えた食事を意識的に心掛けて、定期的な運動で体内の脂肪を減らして血糖値を下げることが重要です。
運動療法に関しては糖尿病の合併症の有無を主治医に確認して取り組むようにしましょう。
【参考文献】
【執筆者プロフィール】井林 雄太 (いばやし・ゆうた)
1984年生まれ、2008年大分大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務の傍ら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。
【ホームページ】
福岡ハートネット病院:https://heartnet-hp.jp/
2025.8.28 作成