すこやか健康ラボ

尿たんぱくとは?尿たんぱくが陽性だとどんなリスクがある?

健診値を医師がわかりやすく解説!

健康診断結果を活用していますか?受けて終わりにしていませんか?
結果に安心した方にもドキッとした方にも知ってほしい健診値の見方について、わかりやすく解説します。

また、性別・年代別に基準値範囲を超えてしまう人がどのくらいいるのか、基準値範囲を超えてしまうとどのようなリスクがあるのか、この機会に是非チェックしてみましょう。

尿たんぱくとは?

写真イメージ

腎臓の病気の判定に利用される指標の一つが、「尿たんぱく」です。

尿たんぱく陽性とは、尿にたんぱく質が含まれていることを示します。
健康な人の尿には通常、ごく微量にたんぱく質が含まれているものの、尿たんぱくはほとんど排出されません。

しかし、腎臓になんらかの問題が生じて、正常な状態よりも多くのたんぱく質が尿に含まれることがあります。

尿たんぱくの年代別リスク分布(B~D判定(軽度異常以上)の割合)

男性 棒グラフ
女性 棒グラフ
  • 出典:株式会社JMDCが保有する健診データを基に、各年代別の尿たんぱくの「B~D判定:軽度異常以上」の割合を集計

尿たんぱくが陽性だとどんなリスクがあるの?

血尿のみ陽性は、泌尿器のがん、結石、膀胱炎、前立腺炎などが疑われます。
尿たんぱく陽性のみと、たんぱく尿と血尿のどちらも陽性の場合は、腎臓でろ過フィルターの役割をする糸球体がうまく働いていない可能性があります。

腎臓の病気は、初期症状がほとんどなく、かなり進行してから、むくみ、だるさ、食欲不振、吐き気、不眠、呼吸困難、頭痛、しびれなどの自覚症状があらわれます。
たんぱく尿が微量でも、透析が必要な慢性腎不全に至るケースもありえるので、定期的に検査を重ねましょう。

慢性糸球体腎炎

腎臓の中の「糸球体」という血液から尿を作る部分に慢性的な炎症が起こり、たんぱく尿と血尿が1年以上続く状態です。
自覚症状が出てから比較的短期間で人工透析が必要になるケースもあります。

糖尿病性腎症

糖尿病の合併症の一つで、高血糖値が続き、糸球体毛細血管に障害が起きて発症します。
進行につれて血圧が上昇し、高血圧がさらに腎臓の状態を悪化させます。

高血圧による腎障害

たんぱく尿が多く、血圧が高いと、自覚症状がほとんどないままに、腎臓の機能がだんだん衰えます。人口透析が必要になる場合もあります。

膠原病による腎障害

膠原病の中でも、全身性エリテマトーデスが、腎臓の障害を起こしやすいとされています。
この病気は、女性に多く、自己免疫の異常が原因で全身の様々な臓器(皮膚、腎臓、肺、脳など)に炎症を引き起こす病気です。最終的には、透析を必要とする腎不全に至ります。

なお、人工透析には、週に3回ほど通院が必要で、1回につき4~5時間も時間を費やすことになります。

【参考文献】

  • 診療日数、医療費総額等は株式会社JMDCが保有する診療報酬明細書データを基に算出

【執筆者プロフィール】井林 雄太 (いばやし・ゆうた)

1984年生まれ、2008年大分大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務の傍ら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。

【ホームページ】

福岡ハートネット病院:https://heartnet-hp.jp/

2025.11.27 作成