後悔しない! 入院に備えるための保険の選び方ガイド
- 公開日:
- 2025.12.04
30代はライフステージの転換期を迎える世代であり、将来に対する漠然とした不安を感じている方もいらっしゃると思います。
その不安の1つが病気に関することではないでしょうか? 入院が必要になると働けなくなるうえ、医療費の負担も大きくなります。
医療費には公的医療保険制度がありますが、1~3割の自己負担額が必要になるほか、差額ベッド代や日用品にかかる費用など、公的医療保険制度の対象とならない費用も発生します。
公益財団法人生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」(2022年度)によると、過去5年間に入院し自己負担費用を支払った方のうち、直近の入院で収入減(逸失収入)があった方について、1日あたりの自己負担費用と逸失収入を合計した平均額は25,800円でした。
民間の医療保険に加入することで、公的医療保険制度で不足する部分を補うことができます。また、医療費の自己負担分だけでなく、公的医療保険制度の対象とならない費用もカバーできます。自分に合った保険を選び、病気や入院のリスクに備えましょう。
すべての土台となる「公的医療保険制度」
日本では、国民皆保険制度に基づき公的医療保険制度への加入が義務づけられています。
そのため、全ての方が次のいずれかの公的医療保険制度に加入しており、医療費の自己負担分が抑えられるようになっています。
- 被用者保険:会社員や公務員などが加入する健康保険や共済組合
- 国民健康保険:自営業者やフリーランスの方などが加入する保険
- 後期高齢者医療制度:75歳以上の方、または65歳以上75歳未満で一定の障がいがある方が対象
病院やクリニックなどの医療機関で、マイナンバーカードの健康保険証利用を用いて受付をすると、かかった保険診療費の1~3割(年齢や就業状況、収入によって異なる)の自己負担額で治療を受けられるのは、公的医療保険制度が適用されるためです。
公的医療保険制度には、主に次の給付があります。
- 療養の給付(医療機関での診察・治療等)
- 入院時食事療養費(入院時の食事代の補助)
- 入院時生活療養費(65歳以上の方が医療療養病床に入院している場合の食事・療養環境の費用補助)
- 高額療養費(医療費が高額になった場合の払い戻し)
- 出産育児一時金(出産時の費用補助)
- 埋葬料(被保険者が死亡した際の埋葬費用)
- 傷病手当金(※)(病気やケガで働けない期間の所得補償)
- 出産手当金(※)(出産のために休業した期間の所得補償)
- 傷病手当金・出産手当金は被用者保険(会社員・公務員等が加入する健康保険)のみの給付です。国民健康保険にはこれらの給付はありません。
なかでも、結婚や出産による家族構成の変化、住宅ローンの返済開始、子どもの教育費の本格化など、ライフステージが大きく変化する30代にとって強い味方となるのが、高額療養費制度と傷病手当金です。
専門家からのアドバイス
公的医療保険制度の仕組みを理解することで、民間の医療保険の必要性をより強く感じると思います。
30代はライフステージの変化により家族や住宅ローンなど責任が大きくなる世代であるため、働けなくなったときの制度について理解しておくことが重要です。
特に、傷病手当金は会社員を対象とした制度であり、自営業者やフリーランスの方は対象外です。
そのため、働けなくなったときの収入保障について考えてみるなど、公的医療保険制度でカバーできない部分を把握することが、適切な保険選びにつながります。
医療費の自己負担を軽くする「高額療養費制度」
高額療養費制度とは、毎月の保険診療における自己負担額が一定額を超えた場合に、その超過分が払い戻される制度です。
手術や長期の入院になると、自己負担額が1~3割であっても医療費がかなり高額になることがありますが、高額療養費制度により自己負担限度額を超える支払いをせずに済みます。
自己負担限度額(※)は、年齢や所得状況によって異なります。69歳以下の方の自己負担限度額は下表のとおりです。(2025年10月時点の制度)
- この自己負担限度額は、ひと月(月の1日から末日まで)ごとに適用されます。
| 年収の目安 | 自己負担限度額 |
|---|---|
| 年収約1,160万円~の方 健保:標準報酬月額83万円以上の方 国保:旧ただし書き所得901万円超の方 |
252,600円+(総医療費-842,000円)×1% |
| 年収約770万円~約1,160万円の方 健保:標準報酬月額53万円以上79万円以下の方 国保:旧ただし書き所得600万円超901万円以下の方 |
167,400円+(総医療費-558,000円)×1% |
| 年収約370万円~約770万円の方 健保:標準報酬月額28万円以上50万円以下の方 国保:旧ただし書き所得210万円超600万円以下の方 |
80,100円+(総医療費-267,000円)×1% |
| 年収約370万円以下の方 健保:標準報酬月額26万円以下の方 国保:旧ただし書き所得210万円以下の方 |
57,600円 |
| 住民税非課税の方 | 35,400円 |
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- 旧ただし書き所得とは、住民税の賦課方式としては既に廃止されている旧地方税法における住民税課税方式に関する条文のただし書きとして規定されていた所得の算出方法で、国民健康保険料(税)の算定において広く用いられている所得です。
なお、過去12カ月間に3回以上自己負担限度額を超えた場合に、4回目から自己負担限度額がさらに下がる仕組み(多数該当)や、同一の公的医療保険に加入している世帯内の場合に、それぞれの自己負担額を合算して自己負担限度額を判定する仕組み(世帯合算)もあります。
専門家からのアドバイス
高額療養費制度は、活用することで大きな負担軽減が見込める重要な制度です。たとえば、手術費用が100万円かかった場合でも、年収500万円程度の方であれば実際の負担は約87,000円(約9万円)に抑えられます。
ただし、差額ベッド代や先進医療にかかる費用、食事代などは高額療養費制度の対象外です。これらの費用に備えるかどうかが民間の医療保険を検討する際に大切なポイントになります。
会社員なら知っておきたい、働けないときの収入源「傷病手当金」
会社員(被用者保険の加入者)は、業務外の病気やケガで働けなくなり給与が支給されないとき、傷病手当金を受け取ることができます。
3日間連続で休業したあと、4日目以降の休業日から、「支給開始月を含む直近の継続した12カ月間の標準報酬月額平均額÷30日×2/3」が支給されます。支給期間は、支給開始日から通算して1年6カ月です。
たとえば、標準報酬月額の平均が30万円の場合、1日あたりの支給額は約6,700円(30万円÷30日×2/3≒6,667円)になります。1カ月休業した場合、約20万円の傷病手当金を受け取れる計算です。
公的医療保険制度でカバーできない費用とは?
公的医療保険制度でカバーできるのは、保険診療における医療費に限られ、1~3割の自己負担額は必要です。
加えて、公的医療保険制度が適用されない入院時の個室代(差額ベッド代)や、公的医療保険制度適用外の自由診療の費用、入院にともなって発生する日用品にかかる費用などの雑費は、全額が自己負担になります。
そのため、病気やケガに備えるには、公的医療保険制度だけでは不足する恐れがあります。
民間の医療保険で「何を」「どう」備えるか? 保障内容を解説
公的医療保険制度でカバーできない費用に備えられるのが、民間の医療保険です。
医療保険は、公的医療保険制度のような一律の保障ではなく、保険商品によって保障内容が異なります。
必要な備えを確保するには、どのような保障内容で構成されているかを理解しておくことが大切です。
保険商品は、基本保障(主契約)と特約で構成されます。医療保険の主な保障内容をご紹介します。
専門家からのアドバイス
医療保険は商品ごとに保障内容が大きく異なるので、「なんとなく安心」ではなく目的を明確にすることが重要です。
公的医療保険制度でカバーできない差額ベッド代、先進医療にかかる費用、収入減少への備えなど、具体的にどの費用をカバーしたいのかを整理してから商品を選ぶことで、必要な保障を確保できます。
医療保険の基本保障である「入院給付金」「手術給付金」
医療保険の基本保障は、一般的に、入院給付金と手術給付金が中心となっています。
入院給付金とは、病気やケガで入院した場合に給付されるお金です。入院日数に応じて受け取れる日額方式と、入院すると受け取れる一時金方式があります。また、日額方式と一時金方式の両方を組み合わせたタイプの商品もあります。支払日数については、上限が設けられていることが一般的です。
手術給付金とは、病気やケガで手術をした場合に給付されるお金です。手術1回につき一律の保険金を受け取れるタイプと、手術の種類によって給付金額が変動するタイプがあります。
差額ベッド代や先進医療にかかる費用に備える「特約」
医療保険は、基本保障(主契約)に特約を追加することで、より手厚い保障を受けることができます。
入院時に負担が大きくなる費用は、公的医療保険制度が適用されない個室代(差額ベッド代)や先進医療にかかる費用です。
個室代(差額ベッド代)をカバーする特約や、先進医療にかかる費用をカバーする先進医療特約を付加すれば、基本保障にプラスして給付金を受け取れるため、費用負担を抑えることができます。ただし、全ての保険会社で同様の特約が用意されているわけではないので、加入を検討する際は各保険会社の商品内容を確認することが大切です。
自分に最適な保険を見つける4つのステップ
医療保険の保障内容は、保険商品によってさまざまです。多様なリスクに備えるために医療保険への加入を検討する際、どのように自分に最適な保険を選べばよいか、ステップを追ってご紹介します。
ステップ1:入院給付金日額の設定方法を目的から考える
医療保険の入院給付金の日額は高い方が安心感を得られますが、その分保険料の負担が大きくなります。保険に加入する目的から、適切な保障額を設定しましょう。
貯蓄に余裕がなく医療保険で入院費用をまかないたい方や、個室で治療に専念したい方、自営業やフリーランスで傷病手当金を受け取れない方などは、保障を手厚くした方がいいでしょう。貯蓄に余裕がある方や保険料の負担を抑えたい方は、必要最小限の保障でも十分な場合があります。
ご自身の家計状況、職業、貯蓄額、医療に対する考え方などを総合的に検討し、適切な保障額を選択することが大切です。
ステップ2:「終身型」と「有期型」、あなたに合うのはどっち?
医療保険には、保障が一生涯続く「終身型」と、保障が一定期間内の「有期型」があります。
保障が同一内容の場合、有期型のほうが当初の月々の保険料負担は抑えられます。ただし、有期型には契約を更新できるものもあり、更新をする場合は更新前の契約と比べ保険料が高くなるため、長期間加入し続けると総支払額(トータルの保険料負担)が大きくなる可能性があります。また、一定の年齢に達すると更新ができなくなります。
一方で終身型は、月々の保険料負担は有期型より大きいものの、一般的に保険料は一定で変わらず、保障が一生涯続きます。そのため、長期的に見るとトータルの保険料負担を抑えられる場合があります。
生涯にわたり保障を受けたい方は終身型、一定期間だけ保障が必要な場合は有期型が適しています。
ステップ3:複数の保険会社の保険を客観的に比較する
医療保険の保障内容や受けられるサービス、サポート体制は保険商品・保険会社によってさまざまです。保険料だけでなく、保障の手厚さ、契約後のフォロー体制、請求手続きの簡便さなど、トータルでの価値を検討することが大切です。
自分に最適な保険を見つけるために、複数の保険会社から情報を収集し、総合的に比較しましょう。
ステップ4:無理なく支払える保険料であるか、家計とのバランスを確認する
保険は保障が手厚くなるほど、保険料が上がります。
保険料の支払いが難しくなり、加入後に解約や見直しが必要になると、新たに加入する保険商品の保険料が大幅に上がったり、再加入ができなくなったりすることもあります。
本来、保険は万一に備えるものです。無理なく支払える保険料であることと、必要な保障が確保できていることの両方が重要です。家計とのバランスをみて、適切な保障内容と保険料のバランスであるかを確認しましょう。
最適な保険を見つける4つのステップ
- ステップ1:保険に加入する目的から、金額を設定する
- ステップ2:「終身型」と「有期型」を選択する
- ステップ3:複数の保険会社の保険を客観的に比較する
- ステップ4:無理なく支払える保険料であるか、家計とのバランスを確認する
専門家からのアドバイス
保険選びでは、適切な保障内容と継続可能な保険料設定のバランスが重要です。手厚い保障に魅力を感じがちですが、家計への負担が大きすぎて途中解約になってしまえば元も子もありません。
ご自身のライフスタイルや家計状況に合わせて、長期的に安心して続けられる保険を選択することが大切といえるでしょう。
よくあるご質問と回答
日帰りの手術で、手術給付金を受け取れますか?
入院をともなわない手術でも、ご加入の保険の約款に定められた支払条件(支払事由)に該当すれば給付の対象になります。手術の種類だけでなく、治療目的であることや、医師が必要と認めた手術であることなど、さまざまな条件がありますので、正式な手術名や傷病名、手術部位を医療機関で確認し、ご自身の保険の支払条件に該当するかを保険会社に確認したうえで、給付金の請求を行いましょう。
医療保険には複数加入できますか?
複数の医療保険に加入すれば、保障も複数受けることができます。保険料の負担は大きくなりますが、複数加入により不足する保障をカバーできます。
ただし、円滑に保険金の請求ができるように、加入している保険をしっかり管理することが大切です。
まとめ
さまざまなリスクに備えるには、入院や手術で給付金を受け取れる医療保険が有効です。
医療保険にはさまざまな種類があります。複数の保険を比較し、保障内容が目的に合っているかをよく確認したうえで加入しましょう。
- 本記事に記載されている生命保険の種類や保険商品に関する説明は、一般的な情報提供を目的としており、かんぽ生命の商品について説明しているものではありません。
かんぽ生命の具体的な商品内容については、当社の商品パンフレットやホームページをご確認いただくか、かんぽ生命の社員やお近くの郵便局窓口にお尋ねください。
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この記事の監修

2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP、宅地建物取引士資格保有織瀬ゆり(おりせ ゆり)
元信託銀行員。これまでの経験・知識をもとに、「初心者にもわかりやすい執筆」を心がけている。2児の子育て中でもあり、子育て世帯向けの資産形成、女性向けのライフプラン記事を得意とする。
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