医療保険は必要? メリット・留意点を解説
- 公開日:
- 2025.12.04
日本は公的医療保険制度が充実しているため、生命保険会社が提供する医療保険は必要ないといわれることもあります。
そのため、加入すべきか迷う方もいらっしゃるでしょう。
民間の医療保険は、必ずしもすべての方に必要とは限りません。
手厚い保障を希望する場合や、公的医療保険が適用されない治療に備えるための選択肢のひとつとなることもあります。
また、保険会社によっては、医療保障を特約として付加できる場合もあるため、こうした仕組みについて知っておくと安心です。
民間の医療保険のメリットや留意点を把握したうえで、その必要性を判断しましょう。
医療保険でカバーされる範囲
医療保険は、医療費の経済的負担を軽減するための仕組みであり、公的医療保険制度と生命保険会社が提供する医療保険があります。
同じ「医療保険」という区分ではありますが、保険でカバーできる保障の範囲には大きな違いがあるため、まずはその違いを理解しておきましょう。
公的医療保険制度
公的医療保険制度は、加入が義務付けられている制度であり、年齢や就労状況によって、以下の3つの保険種類があります。
| 保険種類 | 対象者 | 自己負担割合 |
|---|---|---|
| 被用者保険(健康保険・共済組合等) | 会社員・公務員などの給与所得者とその扶養家族 | 原則3割(義務教育就学前は2割、70歳以上は1~3割※) |
| 国民健康保険 | 自営業者、フリーランス、退職者など被用者保険に加入していない方 | |
| 後期高齢者医療制度 | 75歳以上の方(一定の障がいがある場合は65歳以上) | 原則1割(一定以上の所得がある場合は2割または3割) |
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- 70歳以上の自己負担割合は所得によって異なります。
いずれも保険の対象となるのは、病気やケガの治療にかかる入院費や通院費(診察代、検査代、薬代)、手術費などの医療費です。
2022年10月1日より、75歳以上で一定以上の所得がある場合、医療費の窓口負担が1割から2割に変更されました。
超高齢化社会が進行している現状を踏まえると、今後も自己負担の割合が増える可能性はゼロではありません。
多額の医療費がかかった場合には、高額療養費制度も利用できます。高額療養費制度とは、自己負担額が一定額を超えた場合に、その超過分が支給される制度です。
公的医療保険制度のみでも手厚い保障を受けることは可能ですが、通院にかかる交通費や保険適用外の診療費などには対応できないため、注意しましょう。
民間の医療保険
民間の医療保険は任意加入の保険であり、所定の病気やケガで入院や通院が必要になった場合に保険金が支払われるものです。生命保険会社によっては、特約として保障している場合もあります。
公的医療保険の対象となる治療費に加え、保険金は食事代や差額ベッド代、交通費など、さまざまな費用にあてることができます。
医療保険は多くの保険会社で扱われており、保障内容や支払条件、保障期間は、保険会社や契約内容によって異なります。
どのような場合に保険金を受け取れるのか、必要な保障と保険料のバランスを考慮しながら、自分に合った保険商品を選ぶことが大切です。
専門家からのアドバイス
日本は国民皆保険制度を採用している国です。
そのため「民間の医療保険は不要」という声も少なくありません。
しかし、入院時の食事代や差額ベッド代は自己負担となります。
医療費によって貯蓄を減らさないためにも、医療保険で備えることを検討しましょう。
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特約保障のご案内医療保険のメリット・留意点
公的医療保険制度が充実している中で、民間の医療保険に加入するべきか迷う方もいらっしゃるでしょう。
そこで、民間の医療保険のメリットや留意点についてご紹介します。
民間の医療保険のメリット
民間の医療保険のメリットは、公的医療保険制度の対象とならない費用もカバーができることです。
公的医療保険制度が充実しているため、医療費は一定範囲内に収まるものの、すべての費用をまかなえるわけではありません。
民間の医療保険には通院・入院日数や所定の病気やケガの治療であることなどの給付要件がありますが、保険契約の内容に応じて保険金が支払われます。
また、保険金は用途が限定されないため、自由に使うことが可能です。
特に、高額になりやすいにもかかわらず公的医療保険制度ではカバーできない先進医療費や差額ベッド代などにあてることもできます。
先進医療とは、「厚生労働大臣が定める高度な医療技術を用いた療養その他の療養であり、保険給付の対象とすべきか否かについて、適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価が必要な療養」のことです。
先進医療を受ける場合、診察や検査、薬、入院など一般治療と共通する部分については保険が適用されますが、先進医療自体にかかる技術料は全額自己負担となります。
先進医療の費用は医療技術の内容によって異なりますが、高額なケースが多く、がんの陽子線治療や重粒子線治療など公的医療保険の対象外となる治療費が数百万円にのぼる場合もあります。
高額療養費制度の対象となるのは保険適用部分に限られるため、先進医療を受けると大きな負担になる可能性があります。
なお、保険会社によっては医療保障を特約として付加する商品もあり、先進医療にかかる技術料も、多くの場合、先進医療特約として付加することが可能です。
先進医療特約を付加していれば、月々数百円程度の特約保険料で高額な先進医療費をカバーできます。
また、入院時に4人以下の少人数部屋や個室を選択した際にかかる差額ベッド代(特別療養環境室料)も、医療費が高額になりやすい要因の1つです。
病院によっては、4人部屋が満室で個室や2人部屋しか空いていない場合や、同室の方との相性や生活リズムの違いから、やむを得ず個室を利用するケースもあります。
料金は医療機関によって異なりますが、1日数千円から個室の場合は1日1万円程度となっており、入院が長期化すると大きな経済的負担となります。
さらに、入院時には差額ベッド代や食事代などの病院への支払いだけでなく、家族の交通費や入院中の日用品、療養生活を快適にするグッズの購入費など、さまざまな費用が発生します。
最近では、入院時に一時金としてまとまった保険金を受け取れる医療保険もあります。そのような医療保険を利用すれば、短期の入院への備えにもなるでしょう。
民間の医療保険のメリット
公的医療保険制度の対象外となる高額な先進医療費や、差額ベッド代なども、ニーズに合わせてカバーが可能。
民間の医療保険の留意点
民間の医療保険の留意点は、公的医療保険の保険料とは別に、保険料の負担が増えることです。
手厚い保障を選択するほど、保険料負担も大きくなります。
一般的に、医療保険の保険料は年齢を重ねるほど高くなる傾向があります。「まだ定年まで時間があるから大丈夫」と後回しにせず、できるだけ早いうちから加入を検討しましょう。
また、医療保険は加入時に健康状態の告知が必要な場合が多いため、持病や既往症がある場合は、加入したくてもできないことがあります。
民間の医療保険の留意点
健康状態によって、加入が制限される場合がある。
専門家からのアドバイス
難病の治療に使われる「先進医療」の技術料は、全額自己負担です。
厚生労働省「第138回先進医療会議」の報告によると、がん治療で用いられる陽子線治療は1件あたり平均約270万円、重粒子線治療は1件あたり平均約310万円かかっています。
医療保険で先進医療特約を付加していれば、多くの費用を保険でカバーできます。
しかし、保険商品によっては給付の対象となる治療や支払限度額が異なるため、事前の確認が必要です。
保障を充実させるほど、保険料は高くなります。
保険料を抑えたい場合は、どの保障が本当に必要かを見極めることが重要です。
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特約保障のご案内まずは自分の状況を確認しよう
日本では公的医療保険制度が充実しているため、医療保険の必要性やその範囲は人によって異なります。
まずは自身の状況を確認し、医療保険が必要かどうか、またどのような保障があれば安心できるかを考えていくことが重要です。
貯蓄状況
病気やケガで医療費が高額になっても貯蓄が十分であれば、費用の支払いに困ることはありませんので、医療保険の必要性は低くなります。
一方、病気になった際に貯蓄では不安に感じる方や、収入が少ない方は、治療費を補てんするために保険の活用を検討するとよいでしょう。
収入形態
共働き世帯では、一方が病気で働けなくなっても、もう一方の収入があるため、医療費や生活費をカバーできる場合があります。
しかし、単身世帯の場合は、ご自身が病気になり働けなくなると収入がなくなるため、医療保険で備えておくと安心です。
また、国民健康保険に加入している自営業の方は、療養中に一定期間受け取れる傷病手当金がありません。
経済的負担が大きくなるため、医療保険でのカバーを検討するとよいでしょう。
専業主婦・主夫の方は、ご自身が病気になった場合、直接的な収入減にはつながらないことが多いですが、家計への影響は小さくありません。
家庭ごとに家事等の分担は異なりますが、さまざまな役割を担っていることが多いため、実際には日々の生活に多くの影響が生じます。たとえば、外食の利用や子どもの預かりサービスの利用増加、日用品・サービスの支出増などが考えられます。
健康状況や病歴
既往症がある場合には、加入できる医療保険が制限される場合があります。
また、病気のリスクが高いと判断された場合、保険料が上がることもあります。
一方、罹患や手術から一定期間を経過していれば加入できるケースもあります。加入時に正確な告知をするためにも、健康状況や病歴を整理しておきましょう。
専門家からのアドバイス
貯蓄が十分でないと感じている方や収入に不安がある方はもちろん、「未就学児や学生の子どもの教育費が必要な方」「結婚資金やマイホーム資金を貯めている方」など、貯蓄に影響を及ぼしたくない方にも医療保険の検討をおすすめします。
医療保険の詳細を知ろう
保険会社が提供する医療保険は、公的医療保険制度ではカバーできない、さまざまな費用をサポートできます。生命保険会社によっては、特約として保障する場合もあります。
通院や入院の保障をベースにさまざまな商品があるので、自分に必要な保障内容を選ぶことが大切です。
まずは、どのような保障があるのか、保険料がどのくらい必要なのかなど、詳細を確認したうえで、自分に必要な保障を考えることから始めましょう。
よくあるご質問と回答
持病がある場合、医療保険に加入できる?
医療保険に加入する際は、原則として健康状態の告知が必要です。
持病がある場合は、その病気の種類や状態に基づき、保険会社が加入の可否を判断します。
また、持病がある方向けに、引受基準を緩和した「引受緩和型医療保険」もあります。ただし、こうした保険は、通常の医療保険と比べて保険料が割高になることが一般的です。
医療保険は早く加入しておいたほうがよい?
年齢が上がるにつれて、病気やケガのリスクも高まるため、多くの医療保険には加入できる年齢の上限が定められています。また、年齢が上がると保険料も高くなる傾向があります。
さらに、一度病気をすると、その病歴が理由で加入できなくなったり、保障が制限されたりする場合があります。
そのため、医療保険の必要性を感じているのであれば、早めに検討することをおすすめします。
ライフステージの変化をきっかけに、新規加入される方も多くいらっしゃいます。
まとめ
保険会社が提供する医療保険は、公的医療保険制度だけではカバーできない、さまざまな費用をサポートします。
通院や入院の保障を基本としたさまざまな商品がありますので、自分に必要な保障内容を選ぶことが大切です。
まずは、どのような保障があるのか、保険料はどのくらい必要なのかなど、詳細を確認し、ご自身に必要な保障を考えるところから始めましょう。
専門家からのアドバイス
生命保険文化センターの調査によると、「直近の入院時の自己負担費用」の平均は19.8万円となっています。
入院中は差額ベッド代や食事代など、病院に支払う費用だけでなく、家族の交通費や、療養生活を快適にするためのグッズの購入費など、想定していない費用も必要となる場合があります。
病気やケガでの入院による貯蓄の減少を防ぐためにも、ご自身のニーズに合わせて必要な保障を検討しましょう。
この記事の監修

2級ファイナンシャル・プランニング技能士、マネーライター、証券外務員一種資格保有田尻宏子(たじり ひろこ)
証券会社、生命保険会社、銀行など複数の金融機関での勤務経験後、2016年から主に生命保険、損害保険、株式投資、ローン、相続関連等の金融分野専門のライターとして活動中。お金の初心者から上級者向けに幅広く執筆。
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