労災保険の申請方法| いくらもらえる? 支給金額の計算から手続きまでを解説
- 公開日:
- 2026.01.27
働いていると、予期せぬ病気やケガに見舞われることがあります。そんなとき、「治療費や休業中の生活費はどうなるのだろう」と不安になる方もいらっしゃるでしょう。
「労災保険」の仕組みを知ると、その不安を解消できるかもしれません。
この記事では、労災保険の基本から、具体的な給付内容、申請の手順までを解説します。万一のときに慌てないために、知っておくべきポイントを確認しましょう。
まずは基本から! 労災保険とはどんな制度?
労災保険(労働者災害補償保険)は、仕事中や通勤中のケガや病気、または死亡した場合に、労働者やその家族を守るための公的保険制度です。
国が運営し、事業主が負担する保険料によって成り立っています。加入手続きは会社が行うため、労働者が自ら申し込む必要はありません。
業務上のトラブルでケガを負ったり、通勤の途中に交通事故にあったりと、予期せぬ事故は誰にでも起こり得ます。
実際に、厚生労働省の統計によると、令和6年(2024年)の労働災害による死傷者数は約13万5,000人、そのうち死亡者数は746人となっています。
このような場合に、治療費の発生や休業による収入減などの経済的負担を軽減させてくれるのが労災保険です。
労災保険は働く全ての方のセーフティネット
ここでは労災保険の加入条件や補償範囲について解説します。
対象となる働き方の種類や、「業務災害」と「通勤災害」の違い、健康保険との使い分けまで、知っておきたい基本的なポイントを整理します。
パートやアルバイトの方も対象! 労災保険の加入条件
労災保険の特徴は、正社員だけでなく、パートやアルバイト、契約社員の方など、雇用形態に関わらず全ての労働者が対象になる点です。
事業主は、従業員を1人でも雇えば労災保険の加入義務が生じ、保険料を全額負担します。短時間勤務や試用期間中でも、労働契約が成立していれば対象となります。
フリーランスや個人事業主(本人)は原則として加入対象外ですが、一部の方は「特別加入制度」を利用できます。ひとり親方や中小企業の事業主などは、以下の厚生労働省「労災保険への特別加入」のページで加入要件を確認してみてください。
- 参考:
- 労災保険への特別加入│厚生労働省
「業務災害」と「通勤災害」の具体的な違い
労災保険で補償される範囲は、「業務災害」と「通勤災害」の2つに分けられます。
業務災害は、勤務中や業務に関連して発生した災害のことです。例えば、工場での作業中の事故や営業先への移動中の交通事故などが該当します。
通勤災害は、自宅と職場の移動中に発生した災害などが該当します。
業務災害と通勤災害は、給付内容や手続きの流れに大きな違いはありません。ただし、業務災害では、休業給付で補償されない3日間の待期期間は、事業主が補償する義務(1日につき平均賃金の60%の補償)があります。
通勤災害の場合、事業主の補償義務はありません。また、通勤災害かつ休業給付(休業補償)が発生する場合は、労働者に初回負担金200円がかかります。
健康保険は使えない? 労災保険との使い分け
健康保険法で定められているため、労災保険の対象となる病気やケガの治療では健康保険を使うことはできません。
健康保険で受診すると、労災保険に切り替える手続きが必要になり、一時的に治療費を全額負担しなければならないケースもあります。
また、労災保険と健康保険では給付内容に大きな違いがあります。
労災保険では治療費の全額が保険から支払われます。休業補償や障害補償など、ほかの給付も用意されています。
一方、健康保険は私生活での病気やケガの治療費が対象で、原則3割の自己負担が必要です。
業務外の病気やケガ(通勤災害を除く)は労災保険の対象外となるため、健康保険を利用して治療することになります。発生の事由に応じて、どちらを使うべきか判断します。
専門家からのアドバイス
従業員を1人以上雇用している事業主は、労災保険への加入義務があります。
未加入のままでいる事業主のもとで業務災害や通勤災害が起こった場合は、労働者が自分で労働基準監督署に労災の申請をしなければなりません。そのうえで、労災認定の判断が下りれば、給付されます。
いくらもらえる? 労災保険の給付内容と金額の計算方法
労災保険では、治療費のほかにも、さまざまな給付があります。ここでは、給付内容や給付額などを解説します。
全ての計算の基本「給付基礎日額」とは?
休業補償を始めとする労災保険の給付額は、「給付基礎日額」をもとに計算されます。
給付基礎日額とは、災害が発生した日の直近3カ月間における賃金総額を実働日数で割った金額です。
ここでいう賃金には、基本給のほか残業代や各種手当も含まれますが、ボーナスは含まれません。
給付額は、給付の種類によって、給付基礎日額の「〇日分」や「〇%」といった形で決まります。
例えば、事故発生日の直前である5〜7月の給料(額面)がそれぞれ35万円だった場合、給付基礎日額は次のように計算します。
(35万円+35万円+35万円)÷(31日+30日+31日)=105万円÷92日≒1万1,413.04円
→1万1,414円(1円未満は切り上げ)
ただし、給付基礎日額には上限と下限が設定されています。令和7年8月1日時点(※令和7年8月1日〜令和8年7月31日適用分)では、最低保障額は4,250円です。
また、年齢階層ごとに最低・最高の限度額が定められており、例えば、55〜59歳の最高限度額は2万6,973円、60〜64歳の最高限度額は2万2,425円といった区分になっています。
これらの金額は毎年8月1日に改定されるため、申請時や公開時には必ず最新の厚生労働省告示・公表資料で確認してください。
【主な給付一覧】治療費から休業補償まで
療養中における労災保険の主な給付内容は次のとおりです。
| 給付の種類 | 給付内容 | 給付額 |
|---|---|---|
| 療養(補償)給付 | 治療に必要な医療費 | 全額補償(労災病院や労災指定病院であれば、窓口で治療費を立て替えることなく治療できる) |
| 休業(補償)給付 | 仕事ができない期間の生活費 |
休業1日につき、給付基礎日額の60%を「休業(補償)給付」、20%を「休業特別支給金」として支給
|
| 傷病(補償)等年金 | 療養開始から1年6カ月経過しても治らない場合 | 傷病等級1~3級に応じて年金を支給(場合によって特別支給金を加算) |
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- 金額は法改正により変更される可能性があります。
これらの給付は、労働者本人だけでなく、その家族の生活を守るための重要な制度です。万一に備えて、給付内容や給付額の目安を確認しておきましょう。
また、治療が終了したものの後遺障害が残った場合や亡くなった場合には、「障害(補償)給付」や「遺族(補償)給付」、「葬祭料(給付)」なども受け取れる場合があります。それぞれの詳細は厚生労働省の「労災保険給付の概要」をご確認ください。
- 参考:
- 労災保険給付の概要│厚生労働省
もしものときに慌てない! 労災申請の5ステップ
労災は突然起こることが多く慌ててしまうと思いますが、落ちついた対応が必要です。ここでは、災害発生直後から受給までの流れを5つのステップに分けて解説します。
ステップ1:まずは勤務先へ報告! 災害発生後の初動
【対応者】被災した労働者本人(または同僚・家族)
業務中や通勤中に病気やケガで倒れた場合、会社へすぐに報告します。まずは落ち着いて、発生日時・場所・状況等を伝えてください。可能であれば、事故現場の写真などの証拠資料も残しておきましょう。
ステップ2:医療機関で受診し、労災の申し出
【対応者】被災した労働者本人(または同僚・家族)
受診時に「健康保険」ではなく「労災保険で治療を受けたい」と申し出ます。労災指定医療機関なら、診療費・治療費は窓口負担額ゼロ円で受診できます。一般の病院で治療を受ける場合は、一旦は全額自己負担になります。
ステップ3:必要な申請書類を準備
【対応者】被災した労働者本人と会社(共同作業)(死亡事故の場合はご遺族)
給付内容に応じて申請書類が異なるため、厚生労働省の公式サイト等で確認し、準備します。労働者本人が記入する欄と会社が記入する欄があるため、会社の担当部署と連携しながら早めに進めましょう。
ステップ4:労働基準監督署に申請
【対応者】会社、または労働者本人
会社経由、または本人が直接、所轄の労働基準監督署に申請書類を提出します。審査を経て承認されると、給付金が支給されます。
原則は会社経由ですが、労働者本人が直接申請することも可能です。
ステップ5:審査結果を確認し、必要に応じて追加対応
【対応者】労働基準監督署からの連絡を受けた会社または労働者本人
不備や不足書類があれば、労働基準監督署から連絡があります。速やかに対応しましょう。
番外編:会社が非協力的な場合は公的機関へ相談
会社が書類作成や申請に協力してくれない場合は、労働者本人が労働基準監督署、都道府県労働局、総合労働相談コーナーなどの公的機関に相談できます。
専門家が手続きの方法を案内してくれるため、安心して進めることができます。
専門家からのアドバイス
労災の申請から休業給付の支給決定までの期間の目安は約1カ月です。場合によっては1カ月以上かかることもあります。
労災指定医療機関は、次の方法で調べることができます。
- 厚生労働省の検索システムを利用する
- 最寄りの労働基準監督署に問い合わせる
- 受診予定の医療機関に直接確認する
緊急時は、労災指定かどうかを気にせず最寄りの医療機関を受診してください。あとから労災の申請をすることも可能です。
支給が決定すれば全額返金されますが、労災指定医療機関以外で診療・治療を受けると、この間の診療費・治療費を一旦全額自己負担する必要があります。この点は注意してください。
よくあるご質問と回答
通勤途中に寄り道をして事故にあった場合も対象となりますか?
労災保険の通勤災害は、自宅と勤務先を往復する間に起きた事故が対象です。経路から大きく外れた場合は対象外となります。
ただし、日常生活に必要な買い物や子どもの送迎、通院など合理的な理由がある場合は、補償の対象になることがあります。
寄り道の内容や距離などによって判断が分かれるため、会社や労働基準監督署に相談してください。
労災保険を使うと会社に不利益はありますか?
労災保険の給付は国が運営する労災保険制度から全額支払われます。そのため、直接的な会社への不利益はありません。
労働災害の発生状況により、安全管理上の問題があると判断された場合は、労働基準監督署から勤務先へ是正指導が入ることもありますが、労災保険の申請は労働者の正当な権利であり、遠慮や気まずさからためらう必要はありません。むしろ仕事中や通勤中のケガを隠すことは違法とされ、勤務先に罰則が科されることもあります。
まとめ
労災保険は、業務中や通勤中のケガや病気または死亡した場合に、それを補償する制度で、治療費や休業中の生活費、後遺障害、死亡時の遺族補償まで幅広くカバーします。
一方で、労災指定医療機関ではなく一般の病院で療養する場合、治療費を一旦全額自己負担する必要があります。労災の支払いは会社経由となり、時間がかかる場合もあるため、もし民間の保険に加入している場合は、業務中のケガや病気が支払いの対象になるかを確認するとよいでしょう。(保険会社によっては、約款で業務中や通勤中のケガや病気は適用しないとしているケースもあります。)
また、私生活における予期せぬケガや病気は、労災保険の適用外になるため、ご自身でしっかり準備しておく必要があります。ご自身の保障について、この機に改めて確認しましょう。
この記事の監修

2級ファイナンシャル・プランニング技能士、マネーライター、証券外務員一種資格保有田尻宏子(たじり ひろこ)
証券会社、生命保険会社、銀行など複数の金融機関での勤務経験後、2016年から主に生命保険、損害保険、株式投資、ローン、相続関連等の金融分野専門のライターとして活動中。お金の初心者から上級者向けに幅広く執筆。
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