終活とは| いつからはじめる? やるべきことを考える上での5つの分野
- 公開日:
- 2025.09.16
終活と言われて、なにをイメージしますか?
遺言やお墓を準備することなどを思い浮かべる方もいるかもしれませんね。
しかし、いざ具体的になにをするのかと問われると、うまく答えられない。あるいは、やることが多すぎて、なにから手をつけていいのかわからない。
そんな声をよく聞きます。
この記事では、終活で考えるべき5つの分野をわかりやすく解説します。
なにからはじめたらいいか迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
そもそも終活とは? どんなメリットがあるの?
「終活」とは、人生の終盤に向けて、さまざまな準備や整理を進めることを指します。
しかし、単なる「死を迎えるための準備」ではありません。「いまを見つめ直し、これからの人生をよりよく生きるための活動」ともいえるのです。
ここでは、終活を行うことで得られる主なメリットを3つ紹介します。
遺された家族の負担を減らす
家族がもっとも困るのは、なにもわからない状態で判断や手続きを迫られることです。
たとえば、次のような状況です。
- 故人名義の銀行口座が凍結されて生活費が引き出せない
- 家族が保険に入っていたことに気づかず、受け取れるはずの保険金の請求期限が過ぎてしまう
- どのような形式の葬儀を望んでいたのかわからず、親族間で意見が対立する
情報を整理し、想いを残しておくことは、遺された家族への「最後の思いやり」といえます。
(生命保険の請求期限は保険会社によって異なりますので、詳細は各社へお問い合わせください)
自分の人生を振り返り整理する
終活は、これまでの歩みを振り返り、自分にとって本当に大切なものはなにかを再確認する時間でもあります。
「このひとに伝えておきたいことがある」「この場所にもう一度行きたい」「この写真はだれかに見てもらいたい」。
そのような気づきが、人生の新たな目的や目標につながることがあるでしょう。
また、身の回りを整理することで、生活がスッキリし、心のなかも整っていく感覚が得られる方もいるようです。
相続などでのトラブルを防ぐ
親族間のトラブルは、感情のもつれや情報不足から生じることが多いです。
「なぜあのひとだけ多くもらうのか」「そもそもどれくらいの財産があるのか知らなかった」そんな疑念がわだかまりを生み、家族関係・親族関係に大きな影響を及ぼすこともあります。
最近では、相続におけるトラブルは俗に「争族」と呼ばれるほど、身近な問題となっています。
「財産分けで争うなんて、お金持ちだけの話でしょ?」と思われるかもしれません。
しかし、少額の遺産をめぐるトラブルも多く発生しています。
実際に、2024年に裁判所で争われた遺産分割事件のうち、相続財産が1,000万円以下のケースは全体の約36%を占めました(令和6年司法統計)。
財産の分け方や介護の方針、延命治療の可否など、事前に考えや意向を示しておくことで、こうしたトラブルの多くは回避できます。
終活は、争族を避け、家族の絆を守るための1つの手でもあるのです。
専門家からのアドバイス
銀行に口座名義人死亡の旨を伝えると口座が凍結されます。
口座凍結後は相続手続きが完了するまで原則として預金引き出しは不可です。
しかし、当面の生活費や葬儀費用のために、「遺産分割前の相続預金の払い戻し制度」について押さえておきましょう。
相続する預金のうち、口座ごと(定期預金の場合は明細ごと)に次の式で算出される額は、家庭裁判所の判断を経ずに金融機関から払い戻しを受けることができます。
相続開始時の預金額(口座・明細基準)×1/3×払い戻しを行う相続人の法定相続分
なお、同一の金融機関(複数の支店がある場合は全支店)からの払い戻しは150万円までが上限です。
制度や金額の上限は変更される場合があります。実際の手続きにあたっては、金融機関や専門家に最新の情報をご確認ください。
終活は財産の整理だけが目的ではありません。
人生を振り返り、幸せな老後を過ごすためのものでもあります。
これからしたいことや老後の希望を明確にし、充実した人生を送りましょう。
終活で考える5つの分野
いざ終活をはじめようと思っても、なにをすればいいかわからない方は多いはず。
そこで、終活を5つの分野に分けて進める方法をご紹介します。
財産
最初に手をつけやすいのが財産の整理です。
銀行口座、証券口座、保険、年金、不動産、借入金など、自分の名義で保有しているものをリストアップしておきましょう。
その際、通帳だけでなく、保険証券の保管場所や受取人、マイページやオンライン口座のログイン情報なども含めて整理しておくと親切です。
とくに見落とされがちなのが、ポイントカード、電子マネーなどです。これらは意外と金額が大きくなることがあります。
また、サブスクリプションサービスの課金や通販サイトの自動引き落としなど、死後も支払いが続く可能性のあるものも把握しておきましょう。
医療・介護
自分のからだや医療に関する情報をまとめておくことも重要です。
たとえば、服薬中の薬、持病の記録、かかりつけ医、過去の手術歴などが挙げられます。
延命治療についての希望や、認知症などで判断力が低下したときに、どう対応してほしいかも、できる範囲で記しておきましょう。
介護についても、「自宅で暮らしたい」「施設に入ってもかまわない」「費用はこのくらいまで負担可能」といった希望を伝えておくと、家族も動きやすくなります。
介護施設に入る場合には、住所変更の手続きや生命保険の契約者代理制度の登録をしておくとよいでしょう。
住まい
住まいの今後についても、終活の大切なテーマの1つです。
将来的に空き家となる可能性があるのならば、売却や賃貸、管理の方法まで含めて検討しておきましょう。
持ち家であれば、名義や権利関係の整理も忘れず、登記簿を確認しておくと安心です。
心身の衰えや病気などの際には、高齢者住宅への住み替えや施設への入所も選択肢になります。
高齢者住宅・施設にはさまざまな種類があるため、各施設のサービス内容や費用などを事前に調べておくと役に立ちます。
葬儀・お墓
「自分らしいお別れのかたち」を考えておくのも終活の1つです。
葬儀の形式(仏式・神式・無宗教など)、規模、遺影の選定などの情報があると、家族は大いに助かります。
お墓についても、生前に購入しているか、永代供養を希望するか、散骨か納骨堂かといった点も含めて方向性を考えておきましょう。
また、亡くなった方の預貯金口座は凍結されてしまうため、葬儀費用や遺された家族の当面の生活資金を事前に用意しておくとよいでしょう。
相続
相続は、場合によってはトラブルになり得ます。遺言書を作成する、財産の分配理由を明記するなど、早めに対策しておくことがなによりの安心につながります。
遺言書には自筆証書遺言や公正証書遺言や秘密証書遺言などの種類があり、法的に有効な形で残しておくことが大切です。
信頼できる司法書士や行政書士に相談するのも1つの手です。
まずは5つの分野に沿って終活をはじめてみましょう。
5つの分野
- 財産
- 医療・介護
- 住まい
- 葬儀・お墓
- 相続
専門家からのアドバイス
「医療・介護」について、自分の希望する治療がある場合は必ずノートにまとめておきましょう。
たとえば、「病名告知」「延命治療」「緩和ケア」「臓器提供」など。
これらに対して希望があれば、はっきり記しておくことをおすすめします。
相続で争いが起きないよう、遺言書を残すことも考えましょう。
遺言書には、以下の3種類があります。
- 自筆証書遺言:遺言者が全文自筆で書く(2019年1月19日以降作成の場合、財産目録については各ページに署名捺印があればパソコン作成でも可)
作成した遺言書は遺言者が保管する他、法務局で事前予約し原本・画像データで保管してもらうことも可能。保管申請時には民法が定める自筆証書遺言の形式に適合するかのチェックも受けられる。ただし、内容についてのチェックはなく、有効性の保証はない - 公正証書遺言:遺言者が2人以上の証人の立ち合いのもとで公証人に述べた遺言の内容を公証人に筆記してもらい作成し、公証役場で保管する
- 秘密証書遺言:遺言者が作成した遺言書の内容を秘密にしたまま封をし、公証人と証人2人以上とともに封紙に署名捺印することで、本人のものであることを証明する。ただし、公証人は遺言書の内容チェックを行わないため、有効性の保証はない。また、預かり制度がなく、遺言者自身で保管する必要がある
このなかで無効や紛失のリスクが低いのは「公正証書遺言」です。
終活を進める上での心構え
終活は、人生の終わりを見据える作業だからこそ、気が重くなることもあります。
けれど、前向きな気持ちで取り組むことができれば、その時間は未来の不安を減らし、より充実した日々を過ごすきっかけになります。
ここでは、終活をスムーズに進めるための3つの心構えを紹介します。
1.完璧を目指さない
終活という言葉を聞くと、「すべてをきちんと整理しなければ」と身構えてしまいがちです。
しかし、はじめから完璧に仕上げる必要はありません。
むしろ「ざっくり」はじめるほうが、長続きします。
仮に、あなたがエンディングノートを買ったものの、なにから書けばよいかわからず、数カ月放置しているとします。
そんなときは、「好きな食べもの」や「旅行先の思い出」といった軽いテーマから書きはじめてみてください。
少しずつ筆が進み、数カ月後には医療や財産の希望まで自然と書き進められるかもしれません。
はじめはノートに一行書くだけでもかまいません。
最初の一歩が、終活への抵抗感を和らげてくれます。
2.家族と対話する
終活はひとりで抱え込まず、信頼できる家族や友人と話しながら進めることをおすすめします。
そうすることで迷いが減り、思いが伝わりやすくなるからです。
家族と対話することで、自分でも気づいていなかった価値観や希望に気づけることもあります。
こんなケースが考えられます。
Aさんは、長男にだけ終活の話をしていましたが、後になって長女が「私も話を聞きたかった」と傷ついていたことがわかりました。
そこであらためて家族全員で話し合いの場を持ったところ、きょうだい間の誤解が解け、相続の方針も一致する形でまとまりました。
大切なのは、独りよがりにならず、残されるひとの立場を想像することです。
対話すること自体が、なによりの終活になる場合もあります。
3.定期的に見直す
終活は一度取り組んだから終わりではありません。
人間関係、財産、健康状態など、状況は日々変化します。
数年おき、あるいは誕生日や年末年始など、節目ごとに見直すことをおすすめします。
たとえば、家族のひとりが亡くなったにもかかわらず、保険金の受取人が変わっていないというケースがあります。見直しておかなければ、のちのちトラブルになりかねません。
一度書いた内容も、定期的な見直しによって「いまの自分」にアップデートする。これが、家族にも安心を与える行動になります。
専門家からのアドバイス
充実した老後を過ごすためにも、家族で一度終活について話し合うことをおすすめします。
「財産の相続をどうするか?」など、難しいことだけでなく、家族に言っておきたいことや老後の希望を伝えるいい機会になります。
家族や財産の状況が変化する可能性がありますので、エンディングノートの見直しも定期的に行ってください。
よくあるご質問と回答
終活は何歳からはじめればいいですか?
「終活=高齢者のもの」と思われがちですが、実は年齢に関係なくはじめていいものです。
病気や災害など、人生の予期せぬ変化はだれにでも起こり得ます。
むしろ元気なうちにはじめるほうが、冷静に判断しやすく、準備もスムーズに進められるでしょう。
たとえば50代なら、定年後の暮らしを見据えた人生設計として取り入れるのもよいタイミングです。
家族に終活の話をすると不安にさせてしまいそうで心配です。
たしかに「死」を連想させる話題は避けたくなるものです。
しかし、終活は「死を迎えるための準備」ではなく、「これからをよりよく生きるための対話」と伝えれば、前向きに受け止めてもらえるでしょう。
あなたの考えを共有することで、家族の安心感にもつながります。
感謝や希望を伝えるよい機会にもなりますよ。
まとめ
終活は、人生の「終わり」を考える活動ではなく、「これからをよりよく生きる」ための準備です。
まずは、自分にとって気になるテーマから取り組んでみましょう。「財産」、「医療・介護」、「住まい」、「葬儀・お墓」、「相続」ーーこの5つの分野を整理していくことで、心の中の不安が1つずつ和らいでいくことでしょう。
終活は、だれかのためであると同時に、自分自身のためでもあります。
人生の終盤を、より自分らしく、穏やかに過ごすために、気軽にはじめてみてはいかがでしょうか。
専門家からのアドバイス
終活は悲しいことではありません。
老後の生活を充実させるために、ぜひやっておきたいことです。
なにから手をつけたらいいかわからない方は、老後の希望を考えるところからはじめてはいかがでしょうか?
自分の希望がはっきりすると、遺したいこと(もの)や家族に伝えたいことも見えてきます。
終活は年齢に関係なくいつでもはじめられるものです。
いざというときに慌てないよう、早めに考えてみましょう。
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この記事の監修

2級ファイナンシャル・プランニング技能士、マネーライター、証券外務員一種資格保有田尻宏子(たじり ひろこ)
証券会社、生命保険会社、銀行など複数の金融機関での勤務経験後、2016年から主に生命保険、損害保険、株式投資、ローン、相続関連等の金融分野専門のライターとして活動中。お金の初心者から上級者向けに幅広く執筆。
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