エンディングノートの書き方ガイド| 何にどんな内容を書いていくべき?
- 公開日:
- 2025.09.16
エンディングノートと聞くと、「死を意識するもの」と捉えられがちです。しかし一方で、「いまを自分らしく生きるためのノート」としても注目されています。
人生100年時代、なにが起きてもおかしくありません。
自分の意思や希望、大切な情報を整理しておくことは、本人にとっても家族にとっても大きな安心材料になります。
書く内容に正解はありません。
遺言書のように法的効力がないからこそ、自分らしく、自由に、自分のペースで進められる。
それがエンディングノートの大きな魅力です。
まずはどんなことを書けばいいのか、なにからはじめればいいのか。
その第一歩をこの記事でご紹介します。
エンディングノートと遺言書との違い
「エンディングノートと遺言書、なにが違うの?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。
両者の違いを整理しておくことで、エンディングノートの役割がより明確になります。
遺言書:法的効力を持つ意思表示の書類
民法に定められた手続きで作成された遺言書は、相続において法的効力を持ちます。
遺言書の内容は、「だれになにを遺すか」「遺産の分割方法」「遺言執行者の指定」など、相続の意思を具体的かつ明確に伝えるものが主です。
遺言書には公証役場で作成する「公正証書遺言」や自筆で書く「自筆証書遺言」などがあります。
それぞれ書き方や証人、署名・押印の有無など厳格なルールがあり、不備があると無効になる場合もあるため、注意が必要です。
エンディングノート:法的効力はないが家族に大切な意思を伝えるメモ
一方で、エンディングノートは「自分の希望や情報を記録しておくメモ」であり、法的効力はありません。
しかし、法的効力はなくとも、家族にとっては非常に価値のある情報源になります。
医療や介護、葬儀などに関する希望、財産の情報、サブスクリプションサービスなどの契約、パスワードやアカウントの整理など、実際に遺された方が「困りやすいこと」に対応しているのが特徴です。
たとえば、次のような状況を想定しています。
- 親が急に倒れたときに、どんな保険に加入しているのかわからない
- 重症で回復の見込みが少なく、延命治療の意思がわからない
- 銀行口座がどれかわからない
- 保険証券がどこにあり、どこで手続きすればいいのかわからない
このような事態を防ぐ手段として、エンディングノートが効果を発揮します。
専門家からのアドバイス
エンディングノートと遺言書は役割が異なるため、併用することで相互に補完できます。
遺言書は法的効力がある一方で厳格な要件があり、エンディングノートは自由度が高い代わりに法的効力がありません。
両方を活用することで、法的な意思表示と日々の生活における具体的な希望の両方を家族に伝えられるでしょう。
エンディングノートの最大の価値は「発見しやすさ」と「理解しやすさ」です。
法的効力がない分、感情や背景を自由に記載でき、家族間の理解促進に役立ちます。
定期的な更新を前提とした「生きた文書」として活用することが大切です。
書き方ガイド、記入項目例
一口に意思を伝えるといっても、幅広い内容になります。
「こんなにたくさんのことを書くの?」と、気が遠くなるかもしれません。
でも、最初から完璧を目指す必要はありません。
書けるところから、少しずつ進めれば大丈夫です。
ここからは、エンディングノートに書いておきたい主な項目と、それぞれの背景をかんたんにご紹介します。
書く内容をイメージできれば、きっと手が動きやすくなるはずです。
生年月日・住所・血液型
身元を確認するうえで、基本情報の記載は欠かせません。
とくに、医療機関にかかる際や災害時の本人確認で役立ちます。
血液型は輸血など緊急医療で必要になる場合があり、正確に記録しておくと安心です。
生い立ち・趣味
どこで生まれ育ち、どんな人生を歩んできたか。
好きなことや趣味、大切にしてきた価値観などを書くことで、あなたらしさが伝わります。家族にとっては、大切な記録であり、後々の会話のきっかけにもなります。
預貯金・不動産などの財産
財産に関する情報は、とくに相続時に重要です。
どの銀行に口座があるのか、不動産の所在地や登記名義などを記しておきましょう。遺された家族が財産を見つけやすくなり、相続財産の把握漏れを防げます。
証券会社の口座や株式、暗号資産などの預貯金以外の財産も忘れずに記載しましょう。また、満期保険金や解約返戻金がある養老保険や終身保険、個人年金保険など資産性のある保険契約も記載しておくと、財産の全体が把握しやすくなります。
相続財産の分割方法と理由
「だれになにを遺したいか」という気持ちを記しておくことで、トラブルの回避につながります。
遺言書と違って法的効力はありませんが、「なぜそのように考えたか」という背景を添えることで、相続人同士の理解を深めやすくなります。
クレジットカードやサブスクリプション契約情報
クレジットカードやサブスクリプション等の定額サービスなど、本人でなければわかりにくい契約情報も重要です。
放置しておくと延々と請求が続くこともあるため、契約先や解約の方法、ID・パスワードの保管場所などを記録しておきましょう。
年金・生命保険の情報
年金や生命保険の種類や加入状況、保険証券の保管場所などを明記しておくと、手続きがスムーズになります。
とくに生命保険は、受取人が明記されていれば相続手続きなしで受け取れるため、当座の生活資金の確保などに役立ちます。家族が請求漏れをしないように、確認しておくことが大切です。
持病・投薬
病歴や服用中の薬、アレルギーの有無などを記録しておくと、救急搬送時や医療の引き継ぎ時に役立ちます。
かかりつけ医の連絡先もあわせて記しておくと、家族や医療スタッフが対応しやすくなります。
葬儀・お墓
希望する葬儀の形式(仏式・神式・無宗教など)や、葬儀に来てほしい方、連絡を控えたい方などを記しておくことで、遺族の迷いや負担を軽減できます。
お墓の有無や納骨先、宗派なども記録しておくと、手続きや準備がスムーズに進みます。
近しい方への想い
大切な家族や友人へのメッセージは、なによりも心を動かすものです。
感謝や願い、思い出などを、自分らしい言葉で記してみてください。
長文でなくても構いません。短い一言が深く心に残ることもあります。
記入項目まとめ
- 生年月日・住所・血液型
- 生い立ち・趣味
- 預貯金・不動産などの財産
- 相続財産の分割方法と理由
- クレジットカードやサブスクリプション契約情報
- 年金・生命保険の情報
- 持病・投薬
- 葬儀・お墓
- 近しい方への想い
専門家からのアドバイス
基本情報については正確性が最も重要です。
運転免許証やマイナンバーカードの番号、有効期限も併記しておくと、より実用的です。
生い立ちの項目は「故人を偲ぶ貴重な記録」となります。
完璧な文章である必要はなく、箇条書きや写真の添付でも十分価値があるでしょう。
家族が知らない若いころのエピソードなどはとくに喜ばれる内容です。
葬儀の形式は具体的な希望があれば詳細に、とくにこだわりがなければ「家族に任せる」旨を明記することで、遺族の心理的負担を軽減できます。
互助会への加入や葬儀保険がある場合は、契約書の保管場所も忘れずに記載しましょう。
なにに書く?継続のヒント
エンディングノートに「なにを書くか」と同じくらい大切なのが、「なにに書くか」です。
専用のノートを使う方法もあれば、手持ちのノートやデジタルツールを活用する方法もあります。
ご自身に合った書き方を選べば、無理なく続けやすくなります。
市販のエンディングノート
書店や文具店ではさまざまなエンディングノートが販売されています。
テンプレートが整っており、「基本情報」「医療・介護」「財産・相続」「葬儀・お墓」「メッセージ」などカテゴリ別に構成されているものが一般的です。
実用性を重視したタイプには専門家が監修したものもあり、保険加入リストや家系図などを明確に書ける欄が充実しています。
イラスト付きの優しいデザインのものや、2冊セットのペア仕様など、多様なバリエーションがあります。
無料で配布されているエンディングノート
また、意外と知られていないのが、公的機関が無料で提供しているPDFのエンディングノートです。
たとえば、以下のようなフォーマットがあります。
- 法務省 / 日本司法書士会連合会『エンディングノート~あなたに届け、わたしの想い~』
- 各自治体(例:東京都杉並区『わたしのエンディングノート』)
地域によっては、住民向けに配布されていることもあります。市役所や地域包括支援センターなどに問い合わせてみるのもおすすめです。
これらのPDFは自宅でプリントアウトしてすぐに使えるうえ、構成がしっかりしているため、はじめての方にもわかりやすいのが特徴です。
自分の希望やライフスタイルに合った形式を選ぶことで、無理なく書き続けることができます。
デジタルツール
最近では、エンディングノート用のアプリやクラウド型のサービスも登場しています。
スマートフォンやパソコンから手軽に記入・保存でき、内容の更新や共有もしやすいのが特長です。
紙のノートと併用することで、万一の備えがより確実になります。
自作ノート
100円ショップや文具店で手に入るノートやルーズリーフ、バインダー形式のものもおすすめです。
自作の場合、バインダー形式にすることで自由な順番で記入・追加・修正が可能です。
テーマ別に用紙を分け、「医療・介護」「契約情報」「メッセージ」などインデックスで整理すると見返しやすくなります。
必要な情報だけをカスタマイズして書けるのが魅力です。
自分の字で書くことに抵抗がある場合は、WordやExcelで入力して印刷・保管する方法もあります。
書き続けるコツ
エンディングノートは、一度書いて終わりではなく、何度も見直しながら育てていくような存在です。
最初からすべて埋める必要はありません。
まずは気になる項目だけ、思いつくことから手を動かしてみましょう。
「これでいいのかな」と迷うよりも、「いまの気持ちを残しておこう」という気持ちではじめてみてください。
見直しは、誕生日や年末年始といった節目のタイミングがぴったりです。
あるいは数カ月に一度、思いついたときに気軽に読み返してみるのもおすすめです。
また、エンディングノートの存在を信頼できる家族や友人に伝えておくことも大切です。
「この引き出しにあるよ」「ここにまとめてあるよ」と一言伝えておくだけで、いざというときの安心感につながります。
専門家からのアドバイス
はじめての方には、構成が整った市販品の中でも、法的な注意点が含まれている専門家監修のものがおすすめです。
とはいえ、すべての項目を埋める必要はなく、自分に関係ない項目は空白のままで構いません。
エンディングノートを書くうえで、完璧主義は禁物です。
「今の気持ち」を記録することに価値があります。定期的な見直しのタイミングを決め、ライフイベント(転職、引越し、家族の変化)の際には必ず更新するルールを作ると継続しやすくなります。
よくあるご質問と回答
エンディングノートは手書きとデジタル、どちらで書くのがよいですか?
エンディングノートは手書きでもデジタルでも問題ありません。
それぞれにメリットがあります。手書きはそのひとらしさが表れやすく、感情や人柄が伝わりやすいため、家族の心に残りやすいという利点があります。
一方、デジタルは修正や更新がしやすく、バックアップも取りやすいという実用性があります。
最近では、スマートフォンやパソコンで使えるエンディングノート用のアプリやクラウド型のサービスも登場しており、日常的な記録や更新に便利です。
ご自身のスタイルに合った方法を選ぶのがポイントです。
書いたエンディングノートは、どこに保管するのがいいですか?
エンディングノートはいざというとき家族に見つけてもらえる場所に保管することが重要です。
たとえば、リビングの引き出しや仏壇のそば、日頃から家族が開ける書類棚などが適しています。
「エンディングノート在中」と明記した封筒に入れておくと気づきやすくなるでしょう。
「この場所に保管してある」と家族に一言伝えておくのも安心です。
銀行の貸金庫など厳重すぎる保管場所は、家族が気づくことができない可能性があるため注意が必要です。
まとめ
エンディングノートは、単なる「人生の終わりに向けた準備」ではありません。
あなたのこれまでと、これからを、丁寧に見つめ直す作業です。
なにを書いてもいい。どこからはじめてもいい。
正解も不正解もありません。
未来の家族を思いやるために、自分の「いま」と「これから」を言葉にしてみることが、エンディングノートの目的です。
最初の一行を、いまから書いてみてはいかがでしょうか。
この記事に関連するページはこちら
かんぽ生命のご契約に関する「相続のお手続き」についてこの記事の監修

2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP、宅地建物取引士資格保有織瀬ゆり(おりせ ゆり)
元信託銀行員。これまでの経験・知識をもとに、「初心者にもわかりやすい執筆」を心がけている。2児の子育て中でもあり、子育て世帯向けの資産形成、女性向けのライフプラン記事を得意とする。
かんぽ生命ではさまざまな商品を取り揃えています
商品一覧はこちら