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高額療養費制度とは? 医療費負担を軽減する仕組みを分かりやすく解説

高額療養費制度とは?

突然の病気やケガで入院や手術が必要になった際、医療費のことが心配になるのではないでしょうか。

出産・育児、キャリアの転機、住宅購入やリフォームなどのライフイベントが起こる時期に、予想以上の医療費がかかることで、これらのライフイベントに支障をきたす場合もあるかもしれません。

その際に知っておきたいのが「高額療養費制度」という、医療費が一定額を超えた場合に自己負担額を軽減できる公的な制度のことです。

そこで本記事では、この制度の仕組みや注意点までを分かりやすく解説します。

目次
  1. 高額療養費制度とは? 対象者と仕組み
  2. 制度を正しく理解し備えを考える
  3. まとめ

高額療養費制度とは? 対象者と仕組み

まずは、高額療養費制度の基本的な内容と、実際の負担額がどのように決まるのかを確認しましょう。

制度の概要と対象者

高額療養費制度とは、1カ月(1日からその月の末日まで)の医療費が自己負担限度額を超えた場合、超過分が後から払い戻される制度です。健康保険や国民健康保険などの公的健康保険に加入している方なら誰でも利用できます

病院や診療所で保険適用の治療を受けた際の自己負担分が対象になるので、入院だけでなく、外来での治療や薬代も含まれます。

この制度を利用すれば、例えば、医療費が100万円かかったとしても、実際の自己負担は年齢や所得に応じて数万円〜十数万円程度に抑えることができます。高額な医療費が必要になっても、家計への影響を最小限にできる安心の仕組みです。

自己負担限度額の計算方法

自己負担限度額は、年齢や所得によって異なります。まずは、ご自身がどの区分に該当するのかを確認しましょう。

70歳未満の方の自己負担限度額

70歳未満の方の場合、年収に応じて5つの区分に分かれています。

所得区分 月単位の自己負担限度額
年収(※1)約1,160万円~
健保(※2):標準報酬月額(※3)83万円以上
国保(※2):旧ただし書き(※4)所得901万円超
252,600円+(総医療費(※5)-842,000円)×1%
(多数回該当(※6):140,100円)
年収約770万円〜約1,160万円
健保:標準報酬月額53万円以上〜79万円以下
国保:旧ただし書き所得600万超〜901万円以下
167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
(多数回該当:93,000円)
年収約370万円〜約770万円
健保:標準報酬月額28万円以上〜50万円以下
国保:旧ただし書き所得210万円超〜600万円以下
80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
(多数回該当:44,400円)
年収約370万円以下
健保:標準報酬月額26万円以下
国保:旧ただし書き所得210万円以下
57,600円(多数回該当:44,400円)
住民税非課税 35,400円(多数回該当:24,600円)

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  • 年収は目安です。
  • 健保:健康保険等、国保:国民健康保険を指します。詳細は、加入されている健康保険組合、全国健康保険協会、市区町村(国民健康保険)、国民健康保険組合、共済組合までお問い合わせください。
  • 標準報酬月額:健康保険料や厚生年金保険料の計算に利用するため、月々の給与(基本給・残業手当・通勤手当を含んだ税引前給与)を一定の幅で区分した金額のことです。健康保険は1~50等級、厚生年金保険は1~32の等級に分けられています。
  • 旧ただし書き所得:前年の総所得金額などから住民税の基礎控除額を引いた所得を指します。
  • 総医療費:保険適用される診察費用の総額(10割)です。
  • 多数回該当:直近12カ月間に3回以上、高額療養費の支給を受けた場合、4回目以降の自己負担額の上限が引き下がる制度です。

70歳以上の方の自己負担限度額

70歳以上の方は、高額療養費制度において、外来のみの自己負担限度額(個人ごと)と、外来+入院の自己負担限度額(世帯ごと)の両方が設けられています。

所得区分 月単位の自己負担限度額
外来
(個人ごと)
外来+入院
(世帯ごと)
年収(※1)約1,160万円~
健保(※2):標準報酬月額(※3)83万円以上
国保・後期(※2):課税所得690万円以上
252,600円+(総医療費(※4)-842,000円)×1%(多数回該当(※5):140,100円)
年収約770万円~約1,160万円
健保:標準報酬月額53万円以上~79万円以下
国保・後期:課税所得380万円以上
167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
(多数回該当:93,000円)
年収約370万円~約770万円
健保:標準報酬月額28万円以上~50万円以下
国保・後期:課税所得145万円以上
80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
(多数回該当:44,400円)
156万円~年収約370万円
健保:標準報酬月額26万円以下(※6)
国保・後期:課税所得145万円未満(※6)(※7)
18,000円
(上限:年間144,000円(※8))
57,600円
(多数回該当:44,400円)
住民税非課税世帯 8,000円 24,600円
住民税非課税世帯(所得が一定以下) 15,000円

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  • 年収は目安です。
  • 健保:健康保険等、国保:国民健康保険、後期:後期高齢者医療制度を指します。詳細は、加入されている健康保険組合、全国健康保険協会、市区町村(国民健康保険)、国民健康保険組合、共済組合までお問い合わせください。
  • 標準報酬月額:健康保険料や厚生年金保険料の計算に利用するため、月々の給与(基本給・残業手当・通勤手当を含んだ税引前給与)を一定の幅で区分した金額のことです。健康保険は1~50等級、厚生年金保険は1~32の等級に分けられています。
  • 総医療費:保険適用される診察費用の総額(10割)です。
  • 多数回該当:直近12カ月間に3回以上、高額療養費の支給を受けた場合、4回目以降の自己負担額の上限がさらに引き下がる制度です。
  • 収入の合計額が520万円未満(1人世帯の場合は383万円未満)の場合も含みます。
  • 旧ただし書き所得の合計額が210万円以下の場合も含みます。
  • 8月~翌年7月の合計額を指します。

70歳未満・年収約370万円〜約770万円の区分を例に、実際の計算方法をみていきましょう。この区分の計算式は次の通りです。

80,100円+(総医療費-267,000円)×1%

80,100円は基本的な限度額で、総医療費が267,000円を超えた分については、その1%を追加で健康保険の被保険者が負担する、という意味です。

例えば、年収500万円の方が総医療費100万円(自己負担30万円)の治療を受けた場合、次のように計算します。

80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円

つまり、自己負担限度額は87,430円となり、支払った30万円のうち約21万円が払い戻されます。

ご自分がどの所得区分に該当するか、詳しい計算方法を知りたい場合は、加入している健康保険の窓口に確認するとよいでしょう。

入院が月をまたいだ場合の高額療養費について

入院が2カ月にまたがった場合は、1カ月単位で入院費・医療費を計算し、高額療養費に該当するのかが判断されます。

そのため、入院日数、総医療費が同じでも、月をまたぐと自己負担限度額が大きく変わる場合があります。

70歳未満・年収約370万円〜約770万円の区分の方が、15日間入院し、総医療費が100万円だった場合を例に自己負担限度額を確認してみましょう。

例1:入院期間:4月1日~4月15日

80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円
【自己負担限度額:87,430円】

例2:入院期間:4月25日~5月10日

4月分の医療費が60万円、5月分の医療費が40万円の総医療費100万円の場合

  • 4月分
    80,100円+(600,000円-267,000円)×1%=83,430円
  • 5月分
    80,100円+(400,000円-267,000円)×1%=81,430円

83,430円+81,430円=164,860円
【自己負担限度額:164,860円】

このように、入院期間が月をまたぐ場合は自己負担限度額が大きく変わる場合がありますので、申請前に確認しましょう。

ADVICE

専門家からのアドバイス

マイナ保険証を利用すると、高額療養費制度の申請をしなくても、窓口での医療費支払いが自己負担限度額までとなります。

  • オンライン資格確認を導入している医療機関等である必要があります。

ただし、同じ健康保険に加入するご家族の医療費を合算して高額療養費制度を適用したい場合は、事後申請が必要となるのが一般的です。手続きの詳細は、ご自身が加入している健康保険組合にお問い合わせください。

制度を正しく理解し備えを考える

高額療養費制度は心強い仕組みですが、対象外となる費用もあるため、必要な備えを考えていきましょう。

対象外となる主な費用

  • 差額ベッド代
  • 入院中の食事代
  • 交通費
  • 日用品(パジャマ、洗面具など)
  • 先進医療の技術料

これらの費用は全額自己負担となるため、制度を利用しても支払いが発生します。

例えば、差額ベッド代(4人部屋の場合)は1日当たり2,780円かかります。もし、1カ月間(30日間)入院した場合は、8万3,400円の出費になります。

入院中の食事代は1食510円程度(一般所得の場合)かかり、1日3食なら1,530円、1カ月間(30日間)入院すれば4万5,900円の負担になります。

また、病気やケガをすると、医療費以外にもさまざまな出費が発生しますので、必要に応じて民間の保険との併用を考えるとよいでしょう。

医療費以外にかかる出費等

病気やけがをすると、医療費以外にも多くの出費が生じ、また、収入減少による実質的な経済的負担が生じます。

主な出費等の例

  • 交通費:通院のためのタクシー代、ご家族の見舞いの交通費
  • 日用品:入院に必要な衣類、洗面用具、タオルなど
  • 収入減少:病気で働けない期間の収入減
  • 家事代行:家事が難しい間のサポート費用
  • 子どもの預かり費用:治療中の託児サービスなど

特に傷病手当金が支給されない場合は、収入が途絶えるリスクも考慮する必要があります。

病気になる前に検討したい保険の選び方

高額療養費制度は公的な支援として有効ですが、自己負担費用や対象外費用は発生します。事前に、ご自身に合った生命保険などの備えを考えておきましょう。

例えば、医療保障は病気やケガでの入院・手術・放射線治療の際に給付金が出る保険です。高額療養費制度の対象にはならず自己負担になる差額ベッド代など、そして、先進医療を受ける場合の医療費負担が心配な方は検討をおすすめします。

生命保険選びで迷ったら、ファイナンシャルプランナーや保険募集人など、資格を持つ専門家に相談することも1つの方法です。ご自身のライフステージや家計状況に合った保障内容を見つけることが重要になります。

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ADVICE

専門家からのアドバイス

生命保険文化センターの調査によると、直近の入院時の自己負担費用(※)の分布は以下のようになっています。(調査対象:過去5年間に入院し、自己負担費用を支払った方)

  • 5万円未満:10.0%
  • 5~10万円未満:19.7%
  • 10~20万円未満:37.0%
  • 20~30万円未満:12.9%
  • 30~50万円未満:14.0%
  • 50~100万円未満:4.9%
  • 100万円以上:1.5%
  • 治療費・食事代・差額ベッド代・交通費(見舞いに来るご家族の交通費も含む)・衣類・日用品など。高額療養費制度を利用した場合は利用後の金額。

70%以上の方が「10万円以上の自己負担をした」と回答しています。病気になってから慌てないように、民間の保険での備えも検討しておきましょう。

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まとめ

高額療養費制度は、医療費が高額になった際に自己負担額を軽減してくれる公的制度です。健康保険に加入していれば誰でも利用でき、所得に応じた自己負担限度額が設定されています。

ただし、差額ベッド代や食事代、交通費など対象外の費用もあります。

病気になってから慌てないためにも、あらかじめ制度内容を確認し、必要に応じて民間の保険での備えを検討しておきましょう。

  • 社会保障制度に関わる記述は、2026年1月1日現在の社会保障関係法令等に基づき記載したものです。今後、社会保障制度が変わる場合もあります。

この記事の監修

監修者田尻さんの顔写真

2級ファイナンシャル・プランニング技能士、マネーライター、証券外務員一種資格保有田尻宏子(たじり ひろこ)

証券会社、生命保険会社、銀行など複数の金融機関での勤務経験後、2016年から主に生命保険、損害保険、株式投資、ローン、相続関連等の金融分野専門のライターとして活動中。お金の初心者から上級者向けに幅広く執筆。

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