医療費控除はいくらから? 計算方法や確定申告の流れも解説
- 公開日:
- 2026.09.24
医療費が多くかかった年には「医療費控除」を活用することで、所得税や住民税の負担を軽くできる可能性があります。
医療費控除は、一定の条件を満たした場合に所得控除を受けられる制度ですが、「どの費用が対象になるか分からない」「申告の手続きが難しそう」といった疑問や不安をお持ちの方も多いと思います。
本記事では、医療費控除の仕組みや控除の対象となる費用、計算方法、確定申告の流れについて、分かりやすく解説します。
医療費控除の仕組みと、控除の対象となる費用・対象とならない費用
支払った全ての医療費が医療費控除の対象となるわけではありません。
まずは、医療費控除の基本的な仕組みと、対象となる費用・対象とならない費用を確認しましょう。
そもそも医療費控除とは?
医療費控除は、1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、確定申告を通じてその医療費を基に計算される金額の所得控除を受けることができる制度です。適用されると所得税の還付や翌年の住民税の負担軽減が期待できます。
控除の対象となるのは、その年の1月1日から12月31日に実際に支払った医療費で、未払いの医療費については、実際に支払った年の医療費控除の対象となります。
なお、給与所得者の場合でも、年末調整とは別に確定申告が必要になります。
家族の医療費も対象になる
医療費控除ではご自身の医療費だけでなく、生計を一にする親族(※)の医療費も合わせて申告できます。
- 配偶者、6親等内の血族および3親等内の姻族を指します。
同居しているご家族だけでなく、「仕送りをしている別居中の子ども」や「単身赴任中の配偶者」などの医療費も対象になります。
自分1人の医療費では医療費控除の条件を満たさない場合でも、ご家族の医療費を合算することで医療費控除を利用できるケースがあります。
また、共働きの夫婦の場合、別々に医療費控除の申請をすることもできますが、医療費を合算して一方の名義で申告することも可能です。
医療費控除の対象となる費用・対象とならない費用
支払った全ての医療費が医療費控除の対象となるわけではありません。対象となる費用、対象とならない費用の例は以下のとおりです。
医療費控除の対象となる費用
- 病院・歯科医院での診療費・治療費
- 治療目的の歯列矯正費用
- 治療のために処方された医薬品の購入費
- 入院時の部屋代・食事代(※)
- 通院のための交通費(電車・バス)
- 医療用器具の購入費や賃借費
- 義手や義足、松葉づえなどの購入費
- 介護保険で対象となる介護費用
- 妊娠・出産に伴う定期検診、検査代 など
- 本人や家族の都合で個室に入院したときなどの差額ベッド代金は、医療費控除の対象となりません。
医療費控除の対象とならない費用
- 健康診断の費用(※)
- 美容目的の整形手術・歯列矯正費用
- 治療のために直接必要としない近視・遠視のための眼鏡、補聴器等の購入費
- 疾病の予防のためのワクチン接種
- 市販のビタミン剤・栄養補助食品の購入費
- 自家用車での通院にかかるガソリン代・駐車場代
- タクシー代(電車やバスなどの公共交通機関が利用できない場合を除く) など
- 健康診断の結果、治療が必要となった場合は医療費控除の対象となります。
ご自身で判断しかねる場合は、所轄の税務署や国税庁のウェブサイトなどで確認してください。
なお、健康の維持増進および疾病の予防として健康診査や予防接種などの取り組みを行っている方が、12,000円を超える対象医薬品を購入した場合は、確定申告の際に「セルフメディケーション税制」を適用できます。
ただし、この控除を受ける場合には、通常の医療費控除を受けることはできません。
専門家からのアドバイス
医療費控除の対象となるかどうかを判断する際の基準として、「治療目的(病気・不調の改善)」の場合は対象になりやすく、「美容・予防目的(見た目の改善・健康維持)」の場合は対象外になることが多い、という点を目安にするとよいでしょう。
また、ご家族分の医療費を合算して申告する際は、所得税率の高い方がまとめて申告した方が、税負担の軽減効果が大きくなる傾向にあります。世帯全体で最適な申告方法を検討することが大切です。
医療費控除の計算方法
では、具体的にどれくらいの医療費を負担したときに、医療費控除を受けられるのでしょうか。
ここからは、医療費控除の計算方法を具体例で解説します。
医療費控除の計算式
その年の所得が200万円以上の場合、医療費控除では次の計算式で算出される金額が控除されます。
医療費控除額=[実際に支払った医療費の合計額] - [保険金などで補てんされる金額] - [10万円]
「保険金などで補てんされる金額」とは、加入している生命保険などで受け取った給付金、健康保険などから支給される高額療養費や出産育児一時金などを指します。
なお、受け取った給付金や高額療養費などは、その給付の対象となった医療費の範囲内でのみ差し引きます。
給付金の金額が対象となった医療費を上回った場合でも、超過した金額を他の医療費から差し引く必要はありません。
例えば、入院にかかった医療費が5万円で、その入院に対して8万円の入院給付金を受け取った場合、医療費から差し引くのは5万円までです。給付金の残り3万円を、通院費など他の医療費から差し引く必要はありません。
なお、医療費控除の上限額は200万円です。
所得が200万円未満の場合は「5%ルール」が適用される
その年の所得が200万円未満の場合は、次の計算式が適用されます。
医療費控除額=[実際に支払った医療費の合計額] - [保険金などで補てんされる金額] - [総所得金額等の5%]
例えば、総所得金額が150万円の場合、150万円×5%=7万5,000円を差し引くことになります。
つまり、所得が200万円未満の方は、年間の医療費が10万円を超えていなくても、医療費控除を受けられる可能性があります。
実際の計算例でシミュレーションしてみましょう
計算式を踏まえて、どれくらいの金額を所得から控除できるのかシミュレーションしてみましょう。
ケース1:総所得金額400万円、年間医療費30万円、給付金15万円
このケースでは、総所得金額は200万円以上のため、以下の式に当てはめて計算します。
医療費控除額=[実際に支払った医療費の合計額] - [保険金などで補てんされる金額] - [10万円]
実際に支払った医療費の合計額:30万円
保険金などで補てんされる金額:15万円
そのため、医療費控除額は、
30万円 - 15万円 - 10万円 = 5万円
となり、このケースでは5万円を所得から控除できます。
ケース2:総所得金額180万円、年間医療費20万円、給付金なし
このケースでは、総所得金額が200万円未満のため、以下の式に当てはめて計算します。
医療費控除額=[実際に支払った医療費の合計額] - [保険金などで補てんされる金額] - [総所得金額等の5%]
実際に支払った医療費の合計額:20万円
保険金などで補てんされる金額:0円
総所得金額等の5%:180万円 × 5% = 9万円
そのため、医療費控除額は、
20万円 - 0円 - 9万円 = 11万円
となり、このケースでは11万円を所得から控除できます。
専門家からのアドバイス
「医療費控除額 = 還付額」ではない点に注意してください。
実際の還付額は、控除額に対してご自身の所得税率を掛けた金額(医療費控除額 × ご自身の所得税率)となるため、同じ医療費でも所得水準によって税負担の軽減効果は大きく異なります。
また、公的制度の高額療養費制度により、後日一部が返還される場合は、その返還される金額分を差し引いた「実際の自己負担額」を基に医療費控除を計算する必要があります。この点にも注意しましょう。
医療費控除に必要な書類と確定申告の方法を整理
医療費控除の適用を受けるためには、確定申告を行う必要があります。ここでは、確定申告に必要な書類や手続きの流れを整理しておきましょう。
医療費控除に必要な書類
医療費控除の申請では、次の書類が必要となります。
- 確定申告書
- 医療費控除の明細書
医療費控除の明細書には、医療を受けた方の氏名、病院名、支払った医療費の金額などを記入します。
領収書を添付する必要はありませんが、税務署から確認を求められたときに対応できるよう、確定申告期限から5年間は保管しておく必要があります。
なお、加入している健康保険組合から交付される「医療費通知」を添付すると、医療費控除の明細書の入力を簡略化できます。この場合、領収書の保管も不要です。
確定申告の流れ
医療費控除の申請にあたっては、まず確定申告書を作成します。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すると確定申告書をオンライン上で作成できます。
さらに、マイナポータル連携を利用すれば、保険診療分の医療費情報を自動取得・自動入力できるため、手間を減らすことができます。
書類完成後、所轄の税務署へ提出します。e-Taxによるオンライン提出のほか、提出時の納税地(住所地)を所轄する税務署へ持参・郵送する方法もあります。
確定申告の提出期限
確定申告の期間は、原則として毎年2月16日から3月15日まで(※)です。
- 申告期限が土曜日、日曜日、祝日等の場合は、その翌日が期限となります。
なお、還付申告のみを行う場合は2月16日以前でも提出できます。スマートフォンからでも提出できるので、必ず期限内に手続きを終わらせるようにしましょう。
専門家からのアドバイス
マイナ保険証を利用している場合、医療費通知情報をマイナポータル経由で取得できるため、確定申告書の作成時に保険診療分の医療費が自動で入力されて便利です。
ただ、保険診療以外の治療やドラッグストアでの薬代、健康診断の費用などは通知情報に含まれないため、領収書などを基にご自身で入力する必要があるなど、注意点もあります。
不明点や不安がある場合には、税理士などの専門家に確認することをおすすめします。
医療費の負担が増加した年に考えたいこと
医療費控除は、医療費の負担を軽減できますが、あくまで「医療費を支払った後」の負担軽減を受ける仕組みです。
また、先ほど解説したとおり、自家用車での通院にかかるガソリン代や駐車場代など、控除の対象とならない費用もあります。
将来、高額な医療費が必要になることも想定し、事前に備えておくことも重要です。
病気やケガで入院や治療が必要になった場合、自己負担となる医療費が想定以上に大きくなるケースも珍しくありません。こうしたリスクに備える手段の1つとして、医療保障への加入があります。
入院一時金や入院保険金、手術保険金などを受け取れる医療保障に加入することで、入院や手術が必要になったときの経済的な負担を軽減できます。
医療費がかさんだ年を機に、医療費への備えを見直してみてはいかがでしょうか。
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特約保障のご案内専門家からのアドバイス
医療費がかさんだ年は、たんに医療保障への加入を検討するだけでなく、「公的制度でどこまで保障されるのか」を確認したうえで備え方を考える、よい機会になると思います。
近年は日帰り入院や通院治療が主流になっているため、民間の医療保険で入院給付を中心に備えている場合、医療費等を十分にカバーできない可能性もあります。
公的制度と民間の生命保険の役割を整理したうえで、ご自身の収入や貯蓄状況に応じて適切に備えることが、無理のない保障につながります。
「生命保険に加入するべきか判断できない」「公的制度がどこまでカバーしているのか分からない」という方は、生命保険会社に相談してみるという方法もあります。
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お問い合わせよくあるご質問と回答
会社員の場合、医療費控除は年末調整をすれば適用されますか?
年末調整では医療費控除の適用を受けられないため、ご自身で確定申告を行う必要があります。
確定申告には期限が定められているので、必ず期限内に手続きを行うようにしましょう。
「医療費通知」を紛失した場合、医療費控除は受けられませんか?
マイナポータルと連携するかどうかにかかわらず、「医療費通知」を紛失していても、医療費控除を受けることはできます。
マイナポータルと連携して医療費通知のデータを取得すると、医療費に関する情報が自動で入力されます。この場合、医療費通知を保管する必要はありません。
マイナポータルと連携しない場合でも領収書の情報を基に「医療費控除の明細書」を作成すれば、医療費控除を受けることができます。
その際は、確定申告の期限から5年間、領収書を保管する必要がある点に注意しましょう。
まとめ
医療費控除は、一定額を超えた医療費を所得から控除することで、税負担を軽減できる制度です。
医療費控除を適用するには確定申告が必要となりますが、マイナポータルと連携することで、比較的簡易な手続きで申告できます。
また、医療費控除を活用するだけではなく、医療費への備えを見直し、万一の際に適切な保障が受けられるようにしましょう。
この記事の監修

マネーライター、2級ファイナンシャル・プランニング技能士資格保有歴あり内藤みさき(ないとう みさき)
生命保険会社の業務委託先および大手外資系コンサルティングファームにて、約11年間にわたり生命保険の新契約受付業務や審査領域における加入限度管理など、保険業務全般に幅広く従事。実務とマネジメント双方の経験を活かし、現在は保険分野を中心とした金融コンテンツの監修者として対応。
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