社会保障(公的保障)を整理してから生命保険を考える| 失敗しにくい考え方
- 公開日:
- 2026.09.24
病気や老後の生活に不安を感じ、民間の生命保険への加入を検討している方も多いのではないでしょうか。
一方、日本には健康保険や公的年金、労災保険など、生活を支える社会保障(公的保障)制度が整っています。
本記事では、こうした社会保障の全体像と保障範囲を整理したうえで、社会保障では不足しやすい部分をふまえながら、どのように生命保険を選ぶべきかを解説します。
社会保障でカバーできるリスクを理解しよう
社会保障制度は、国民生活の安定を社会全体で支え合うための仕組みです。
病気やケガ、失業、介護、障がい、老後、万一の際などのリスクに対して、一定の保障や給付を受けられるように設計されています。
その中核となるのが、「健康保険」「公的年金」「労災保険」などの社会保険です。これらは、一定の条件を満たす場合には原則として強制加入となっており、誰もが必要な保障を受けられるように制度化されています。
生命保険は、こうした公的な仕組みでは十分にカバーしきれない部分を補うための保障です。
社会保障の内容を正しく把握していないと、ご自身にとって不要な生命保険に加入してしまったり、公的な保障では補いきれないリスクに備えられなかったりする恐れがあります。
ご自身に合った生命保険を選ぶために、まずは社会保障の全体像や特徴を理解しましょう。
専門家からのアドバイス
ご自身が利用できる社会保障の内容を事前に確認しておくことが、「自分に必要な保障」を考えるうえでの重要なポイントです。
例えば「労災保険」は主に労働者を対象とした制度ですが、個人事業主やフリーランスの方でも、一定の要件を満たす場合は特別加入制度を利用して加入できることがあります。
社会保障(公的保障)の全体像を把握する
社会保障制度は、「社会保険」「社会福祉」「公的扶助」「保健医療・公衆衛生」の4つの柱からなり、私たちの生活を幅広く支えています。
社会保険
社会保険には、「健康保険」「公的年金」「労災保険」「雇用保険」「介護保険」などの制度があります。
社会保険は、原則として加入が義務づけられている制度です。病気やケガにかかる医療費の自己負担額の軽減、老齢年金、失業時の給付など、さまざまなリスクに対して経済的な支援を行っています。
生命保険を検討する際に、特に確認しておきたいのが社会保険です。
社会保険について詳しくは「社会保険の種類・特徴を整理する」で解説しています。
社会福祉
社会福祉は、高齢者や障がいのある方、乳幼児・児童など、支援を必要とする方が安心して暮らせるようにするための仕組みです。
介護サービス提供体制の整備、福祉施設の利用支援、児童手当の給付などを通じて、生活の質の維持・向上を支えています。
公的扶助
公的扶助は、生活に困窮している方に対して、最低限の生活を保障するために行う制度です。
公的扶助の代表的な制度は生活保護です。生活保護は、収入や資産が一定基準を下回る場合に、憲法が定める最低限の生活を営めるよう保障し、自立を支援する制度です。
保健医療・公衆衛生
保健医療・公衆衛生は、病気の予防、健康増進を目的とした制度です。
具体的には、感染症対策や予防接種、健康診断、妊産婦を含む親や乳幼児の健康支援などがあります。
また、保健医療・公衆衛生には、国民の健康を守ることで医療費を抑制する役割もあります。
社会保険の種類・特徴を整理する
「社会保険」には、病気やケガ、老後、失業など、人生で起こりうるさまざまなリスクに対する一定の保障があります。
健康保険(医療に関する保障)
日本では、全ての方が健康保険や国民健康保険など、何らかの公的医療保険に加入することが義務付けられています。
お互いの医療費を支え合う「国民皆保険制度」が採用されており、医療機関の窓口で支払う医療費は、原則として自己負担割合3割(※)です。
- 6歳(義務教育就学後)から70歳未満の場合です。75歳以上の場合1割(現役並み所得者は3割、一定以上所得者は2割)、70歳から74歳までは2割(現役並み所得者は3割)、6歳(義務教育就学前)未満は2割です。
さらに、公的医療保険に加入していれば、1カ月(1日から末日)当たりの医療費の自己負担額が一定額を超えた場合に、超過分が払い戻される「高額療養費制度」を利用できます(※)。
- 差額ベッド代や入院時の食事の自己負担分などは含まれません。また、医療費の自己負担限度額は年齢や所得によって異なります。
高額療養費制度について詳しくはこちら
高額療養費制度とは? 医療費負担を軽減する仕組みを分かりやすく解説また、会社員などが業務外の病気やケガで会社を休み、事業主から報酬を受け取れない場合には、「傷病手当金」が支給されます。
傷病手当金について詳しくはこちら
傷病手当金の支給条件と申請方法| 病気やケガで働けないときのための完全ガイド専門家からのアドバイス
公的な支援を整理するに当たっては、「お金の流れ」をイメージしておくことが大切です。
例えば健康保険が適用される場合、医療機関での支払い時点では、原則として自己負担割合3割(年齢や所得により異なる)になります。
それに加えて、高額療養費制度により、1カ月当たりの医療費の自己負担額が一定額を超えた場合には、上限を超えた分が後から払い戻されます。
また、医療費とは別に「収入減」への備えとして、傷病手当金があります。治療が長期化して就労できない状態が続く場合、健康保険により標準報酬月額の平均を日額換算した額の約3分の2相当額が通算して1年6カ月支給されます。
公的年金(老後、障がい時、遺族のための保障)
日本の公的年金は、20歳から60歳未満の全ての方が加入する「国民年金(基礎年金)」を土台としています。その上に、会社員や公務員が加入する「厚生年金」が上乗せされる、いわゆる2階建て構造です。
公的年金には、「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」があります。
老後の生活を支えるために支給されるのが「老齢年金」です。一定期間保険料を納めることで、原則として65歳(※)から生涯に渡り年金が支給されます。
- 一定の範囲内で繰り上げ・繰り下げ受給も可能です。
また、現役世代で病気やケガで生活や仕事が制限される障がいを負った場合には「障害年金」が、年金納付状況などの要件を満たした被保険者が亡くなった場合には、その方の遺族に「遺族年金」が支給されます。
労災保険・雇用保険(働けなくなったときの保障)
「労災保険」は、業務上の事由や通勤により発生した病気やケガ、障がいに対して、保険給付を行う制度です。パート・アルバイトを含めた全ての労働者が対象です。
労災保険について詳しくはこちら
労災保険の申請方法| いくらもらえる? 支給金額の計算から手続きまでを解説「雇用保険」は失業中の生活を心配することなく、安心して求職活動ができるようにするための制度です。労災保険加入者のうち、所定労働時間が週20時間以上で、31日以上の雇用見込みがある労働者が対象です。
失業した際に、支給要件を満たしている雇用保険加入者は失業手当(基本手当)を受給(※)できます。
- 次の就職が決まっている、自営業を営む、または営む準備をしているなど、再就職を目指さない方には、原則として失業給付は支給されません。ただし、例外的に支給対象となる場合もあります。詳しくはハローワークにご相談ください。
介護保険(介護に関する保障)
「介護保険」は40歳以上の方が加入者となり、自身が必要となった際に介護サービスを利用できる制度です。
介護保険の対象サービスには、自宅への訪問介護や、介護施設への短期入所、デイサービスなどがあります。
65歳以上(※)で要介護認定・要支援認定を受けた方は、介護サービスを自己負担割合1割から3割で利用できます。
- 初老期の認知症や脳血管疾患など、老化が原因とされる病気(特定疾病)により、要介護状態や要支援状態になった40~64歳の方も含まれます。
このように、社会保険には、さまざまな場面で支援を受けられる制度が整っています。「どのような支援をどこまで受けられるのか」を把握したうえで、生命保険を検討しましょう。
リスクに備える生命保険の選び方
社会保障の内容を把握したら、次に「必要な保障」を明確にしましょう。
社会保障でカバーされる金額を確認する
例えば病気やケガで入院が必要になった場合に医療費がどの程度かかるのかは、自己負担割合と高額療養費制度から、月の自己負担額の目安を計算することでおおよそのイメージを持つことができます。
さらに、入院によって働けなくなっても、傷病手当金を受給できるのであれば、ある程度の生活費を社会保障でまかなうことができます。
このように、社会保障の金額目安を把握することで、足りない部分を生命保険で補うという考え方ができるようになります。
リスクを具体的に洗い出す
社会保障の内容を整理したら、次に「自分と家族にどのようなリスクがあるか」を具体的に把握しましょう。
自身の家族構成、収入源、貯蓄状況などから、「万一のとき、遺族が月いくらあれば生活できるのか」「教育費はどの程度必要なのか」「貯蓄でどこまで補えるのか」といった形で具体的な金額を算出し、必要な保障額を見積もることが重要になります。
必要保障額の考え方について詳しくはこちら
家族を持つ30代の方への生命保険のおすすめは? 選び方を解説備えたいリスクから生命保険を決定する
社会保障の内容と、具体的なリスクが整理できたら、最後に「どのリスクを生命保険でカバーするか」を決めていきます。
生命保険には多くの種類があり、対応できるリスクが異なります。
例えば、万一の際に備えたい場合は「終身保険」や「定期保険」、病気やケガによる入院・手術に備えたい場合は「医療保障」などです。
主なリスクと対応できる生命保険商品の一例を表形式にまとめました。
| リスク | 必要な保障 | 対応できる生命保険商品の一例 |
|---|---|---|
| 万一の場合 | 遺されたご家族の生活費や葬儀費用に備えるための保障 | 終身保険 定期保険 |
| 病気やケガ | 医療費などをまかなうための保障 | 医療保障 |
| 子どもの教育資金不足 | 教育費として使える資金 | 学資保険 |
| 老後の生活資金不足 | 安心して老後生活を送るための資金 | 養老保険 個人年金保険 |
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また、「子どもが独立するまでの生活費をカバーする」「定年退職後の生活資金をカバーする」など、保障が必要となる時期にあわせて保険金・給付金を受け取れる生命保険を選ぶことも大切です。
複数の生命保険商品を比較検討したい場合は、各社のパンフレットを取り寄せて内容を見比べてみましょう。
社会保障の仕組みが分かりにくく、必要な生命保険をご自身で判断することが難しい場合は、保険会社や専門家などに相談することをおすすめします。
よくあるご質問と回答
現時点で考えられるリスクを生命保険で補っていれば、生涯安心できますか?
ライフステージの変化に伴い、収入や支出、社会保障の受け取り方が変わる可能性があります。状況に応じて保障内容を確認し、必要に応じて見直しましょう。
生命保険の見直しの必要性について詳しくはこちら
生命保険の見直しは必要? ポイント・留意点を解説まとめ
生命保険を検討する際は、まず社会保障の内容を把握することが重要です。
日本では、医療費の自己負担額を軽減する制度や老齢年金など、生活を支える制度が整備されています。
社会保障の具体的な内容や金額を確認し、ご自身にとって補完が必要なリスクを明確にしましょう。そのうえで目的に合った生命保険を選ぶことが、社会保障と民間の生命保険のバランスが取れた保障設計につながります。
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生命保険はどんな方におすすめ? 自分に合った選び方のポイントを解説- 本記事の社会保障制度に関わる記述は、2026年3月1日現在の社会保障関係法令等に基づき記載したものです。今後、社会保障制度が変わる場合もあります。
この記事の監修

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員新井智美(あらい ともみ)
マネーコンサルタントとしての個人向け相談、NISA・iDeCoをはじめとした運用にまつわるセミナー講師のほか、金融メディアへの執筆および監修に携わっている。現在年間200本以上の執筆・監修をこなしており、これまでの執筆・監修実績は3,500本を超える。
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