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生物多様性保全への取り組み

自然環境やそれを支える生態系の保護は、気候変動とともにグローバルな重要課題となっています。
当社は、自然資本の保全は事業の存続において重要なテーマであると考えており、マテリアリティ(重要課題)の一つに、「豊かな自然を育む地球環境の保全への貢献」を掲げています。今後とも、自然資本の保全に向けた取り組みを行っていきます。

自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)提言への対応

TNFDは、自然資本に関する事業のリスクと機会を適切に評価し、開示するための枠組みを構築する国際的なイニシアチブであり、2023年9月に最終提言を公表しました。当社はTNFDの理念に賛同し、2023年6月に、その活動をサポートするTNFDフォーラムへ参画し、2023年12月にはEarly Adopterとして登録しました。今後も引き続きTNFD提言に沿った開示の充実に向けて取り組んでいきます。

  • TNFD提言に沿った情報開示を行う意思を2024年1月10日までにTNFDのウェブサイト上で登録した企業・団体のこと。
TNFDロゴ画像

ガバナンス

(1)ガバナンス体制

当社では、生物多様性・自然資本に関する諸課題について、サステナビリティ委員会(委員長:サステナビリティ推進部担当執行役)やリスク管理委員会(委員長:リスク管理統括部担当執行役)にて検討・協議を行っています。検討・協議状況は経営会議に報告し、特に重要なものについては経営会議で協議し、代表執行役社長が決定する態勢を構築しています。また、取締役会に定期的に報告を行っており、取締役会においては生物多様性・自然資本への対応状況を適切にモニターし、必要に応じて関連する方針や目標、戦略・計画などに関して監督を行う態勢を構築しています。

TNFDガバナンス体制図

(2)先住民、地域社会等との人権尊重に向けたエンゲージメント

当社では、人種、肌の色、性別、性的指向、性自認、言語、宗教、政治、信条、国籍、民族、年齢、社会的出自、貧富、出生、障がいなどを理由とした、いかなる差別行為も容認しないことを、人権方針に定めています。
また、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」等に基づき、人権デュー・ディリジェンスの取り組みを実施しています。これは、企業活動における人権への負の影響を防止・軽減していくための継続的なプロセスであり、社外の専門家の意見も踏まえながら、定期的に実施していくことで、人権の尊重と持続的な事業の実現に努めます。
当社の事業活動において、地域住民や先住民族の権利に対しては、当社の投融資先を通じて負の影響を与える可能性があると考えています。このようなリスクを軽減するため、当社は責任ある機関投資家として、投資判断時や投資先企業との対話等において人権を考慮した取り組みを行っています。

戦略

1.生命保険事業

当社ではTNFDの推奨する自然関連リスク・機会の分析アプローチである、LEAPアプローチに基づく分析を行っています。

Locate:自然との接点の特定

TNFDの推奨する自然関連リスクの分析ツールである「ENCORE※1」の分析結果を参考にしながら、自然資本との依存・影響※2それぞれの観点で、自然資本と当社の生命保険事業との接点を洗い出しました。

  • Natural Capital Finance Alliance等が開発した自然関連リスクの分析ツール
  • 依存…当社の事業が自然資本から受ける恩恵を示すもの。水の供給や自然環境が洪水を軽減してくれていることなどが挙げられます。
    影響…事業活動により自然資本に及ぼす変化を示すもの。GHG排出や土地利用などが挙げられます。
依存と影響

Evaluate:自然への依存と影響の評価

特定した自然資本との接点を踏まえ、当社の生命保険事業と自然資本との依存と影響について以下の通り評価しました。

≪影響度の評価≫

影響の分析図

Step1では、当社の事業運営によって、①周辺地域の生態系に影響を与えていないか、②気候変動に影響を与えていないか、③各種汚染物質等の排出を行っていないか、の大きく3つの観点で分析しました。
次に、Step2では、当社の大型施設が生態系にとって重要な地域に位置していないかを確認しました。

【Step1】当社の事業運営が自然資本に与える影響

① 周辺地域の生態系に与える影響
当社の土地利用は、事業所(オフィスビル)の利用によるものです。その上で、当社の事業運営において、攪乱(騒音・光害等)を引き起こす可能性がないかを検討しました。

  • 攪乱とは、例えば大きな騒音を発生したり、屋外で明るい照明を使用したりすることによって、周辺の動植物の生態系バランスに影響を与えることを言います。
  • オフィスビルの利用であるという点で、騒音を引き起こす可能性は低いこと。
  • 防犯上の目的で屋外照明を利用することはあるものの、周辺地域を明るく照らすほどの照度ではないこと。また、当社の事務室内においては照度の基準を定めており、適切な照度に設定していることから、光害を引き起こす可能性は低いこと。

以上を踏まえて、当社の事業所において、周辺地域の生態系に与える攪乱の影響は小さいと認識しています。

② 気候変動
当社が生命保険事業を行うにあたり、GHGの排出によって気候変動に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、営業活動に利用する車両等からのGHGの排出(Scope1)、当社の施設で電気を利用することによるGHGの排出(Scope2)、その他お客さまにお渡しする約款等、紙の使用等から発生するGHGの排出(Scope3)を計測し、GHG削減に向けた各種取り組みを行っています。詳細は、以下の「気候変動への取り組み」のページをご覧ください。

③ 各種汚染物質等の排出
当社は各事業所から一般廃棄物および産業廃棄物、水の排出を行っていますが、無形商材を扱う生命保険事業という特性上、汚染物質の排出は軽微なものであると認識しています。また、廃棄物においてはリサイクル等の処理を行っており、自然資本に与える影響は軽微であると認識しています。

【Step2】当社の拠点周辺の生態系分析

上記Step1を踏まえ、当社の事業運営によって事業所周辺の生態系バランスを棄損する可能性は低いと認識していますが、ビジネスの拡大にあたって大きな建物を建築するなどの、大規模な土地開拓は生態系バランスを破壊する恐れがあり、デモ活動、訴訟等に発展するケースがあることを認識しています。
そこで、当社の大型施設である9つの施設において、ラムサール条約湿地、鳥獣保護区、国立公園、自然環境保全地域に位置していないかを確認した結果、当社の大型施設は、これらの地域に位置していないことを確認しています。
なお、当社の大型施設の一つである福岡サービスセンターから約5.7㎞の距離に、鳥獣保護区として指定されている博多湾が存在し、博多湾においては環境省レッドリスト2020において絶滅危惧IB類に指定されているクロツラヘラサギの越冬地となっていることを確認しています。当社の事業所周辺には、野鳥の生態系において重要な地域が存在しているということも踏まえ、種の保全および自然資本の回復に向けた活動への支援として、野鳥の保護活動への寄付を行っています。

以上の評価・分析を踏まえ、当社の生命保険事業活動によって、生物多様性・自然資本に重大な影響を与える可能性は低いと認識していますが、今後とも生物多様性・自然資本の保全に向けた取り組みを行っていきます。

≪依存度の評価≫
次に、自然資本への依存の観点では、「日頃享受している基本的な自然資本」と「自然災害の被害を低減させる自然資本」によって、当社は安定的な事業活動を実施することができていると考えられます。これらの自然資本に当社が依存していることは、当社の生命保険事業のリスクにも結びつく可能性があります(詳細は後述の「Assess:重要リスク・機会の評価」で記載)。

依存とリスク

Assess:重要リスク・機会の評価

依存と影響の分析結果等を踏まえ、自然資本が当社生命保険事業に及ぼすリスクと機会について、サステナビリティ委員会にて検討の上、特に重要と考えられるものを以下の通り特定しています。

<生命保険事業におけるリスクと機会>

タイプ 当社の認識 時間軸
物理的リスク
(慢性)
生態系バランスが崩れることに起因する感染症の蔓延等による保険金等支払額の増加 長期
物理的リスク
(急性)
洪水・暴風雨等の自然災害によってデータセンターが被災し、運用遅延・停止に陥るリスク 短期
移行リスク 自然関連の取り組みが不十分と判断されることによる社会や投資家等からの評価の低下 短期~中期
機会 健康維持等の商品・サービスに対するニーズの高まりなどの消費者の保険に対するニーズの変化
自然資本の保全に向けた当社の取り組みが評価されることによる、投資家からの評価の向上、保険契約数の増加、優秀な人材の獲得等
リサイクルの推進等による自社の事業環境の持続性の向上、ペーパーレスなどによるコストの削減
中期~長期
スクロールできます
  • 上記リスクと機会の特定に当たっては、想定される大小のリスクを洗い出した上で、当社事業における重要性を勘案し、影響度の高いリスクと機会を開示しています。
  • 時間軸は、短期:5年、中期:15年、長期:30年程度と想定しています。

さらに、保険金等支払額の増加と、データセンターの自然災害による被害については、以下の通り分析を実施しています。

① 生態系バランスが崩れることに起因する感染症の蔓延等による保険金等支払額の増加
気候変動等によって生態系バランスが崩れ、人々の健康に影響が及ぶことで、当社の保険金等の支払いに影響を与える可能性があります。生態系バランスが崩れることによって発生する感染症の蔓延等については、現時点で一般的に確立されたシナリオはないものと認識しています。そのため、現時点で精緻な分析や計測を実施することは困難であると考えています。
一方で、感染症媒介蚊について気温上昇がもたらす活動地域・活動期間の拡大を推定し、蚊が媒介する熱帯性の感染症(デング熱、マラリア)による保険金等の支払額の増加について分析した結果において、2031年度から2050年度まで毎年被害が発生したと仮定した試算では、保険金等の支払額の増加は、20年間の累計で最大200億円程度でした。当社の死亡保険金支払額実績と比較して極めて小さい点や、将来のお支払いに備えて積み立てている責任準備金からのお支払いが可能である点を踏まえれば、保険金支払額の増加が当社の財務健全性に与える影響は限定的であることを確認しています。

② 洪水・暴風雨等の自然災害によってデータセンターが被災し、運用遅延・停止に陥るリスク
自然災害が当社の事業運営に影響を与える可能性のある地域として、被災時の影響の大きさの観点から、物理的リスク(水リスク)のあるデータセンターを優先地域として特定しています。
当社のデータセンター周辺において、洪水等が発生した場合、データセンターの建物が被害を受け、業務運営が遅延するリスクを想定しています。
当社のデータセンターの建物においては、洪水リスクに備えて盛り土を行うなどの対応を行っていることから、実際に浸水するリスクは低いと考えています。また、万が一電力が止まった場合に備えて数日間の自家発電を備えているほか、施設内の加湿に用いる水の供給が止まった場合を想定して水槽内の水を流用するバイパスを設けるなどのリスク低減に向けた対応を行っています。

また、当社は上記データセンターに限らず全社的に大規模災害の発生を想定してBCPプラン(事業継続計画)を策定しており、災害等発生時の初動対応や、重要拠点の機能が停止したときに別拠点で事業活動を継続する計画等を策定しています。加えて、ハザードマップ等により拠点や営業エリアの危険度を評価し、水害に対して特に脆弱な地域にある拠点を対象とした対応計画の策定・訓練等を適宜実施しています。

災害等の自然関連リスクは、総合的に見て、現在のところ当社の生命保険事業に重大な影響を与えているわけではないと考えていますが、今後も定期的に自然関連リスクの評価を行っていきます。

Prepare:対応・報告への準備

上記の特定されたリスクや機会を踏まえて、生物多様性・自然資本の保全に向けた取り組みを進めています。例えば、保全活動への寄付や、ペーパーレス化の推進、プラスチック削減の取り組み、各拠点における地域の清掃活動など、環境保護に向けた取り組みを進めています。

■ 生物多様性・自然資本の保全に向けた支援

【生物多様性の保全に向けた支援】
種の保全・自然資本の回復に向けた取り組みとして、当社は野鳥の保護活動への寄付を行っています。

クロツラヘラサギ

【森林の保全に向けた支援】
森を元気にし、緑を増やす取り組みにつなげていくため、市民団体などの実施する森づくり活動などを支援するための寄付を行っています。

森林の保全に向けた支援

■ 紙使用量の削減(ペーパーレス化)の取り組み
当社は、紙の使用量削減(ペーパーレス化)に取り組み、CO2排出量削減に努めています。

<主な取り組み>

  • 「ご契約内容のお知らせ」などの当社からのご案内について、郵送に代えて当社マイページ上でご確認いただくサービスの提供
  • 保険料払込証明書の電子発行
  • 「ご契約のしおり・約款」の閲覧方法を冊子だけでなく、当社Webサイト上でPDF形式でご覧いただくWeb閲覧での提供
  • コピー用紙削減の推奨や各種事務用帳票の電子化

その他の環境保全活動は、以下のサイトをご覧ください。

2.投融資活動

当社は機関投資家として、投融資先企業の事業活動を通じても自然との関わりを持っています。このため、当社投融資ポートフォリオは以下のような自然関連リスクと機会を持つと考えられます。

<リスクと機会>

投融資活動における自然関連のリスクと機会

タイプ 当社の認識
物理的リスク 水資源など投融資先企業が依存する自然資産・生態系サービスの減少・質の低下・枯渇に伴う投融資先企業のコスト増加や生産障害による投融資資産の価値棄損など
移行リスク 環境保全に関するより厳格な法令や社会的要請に伴う投融資先企業のコスト増加、訴訟リスク、風評リスクの拡大による投融資資産の価値棄損など
機会 環境保護技術や環境負荷の小さい代替商品・サービスへのニーズによる投融資先企業の価値上昇、投融資機会の拡大など

<依存と影響>

企業は事業活動を行う上で自然資本に依存し、また事業活動を通じて自然資本に影響を及ぼします。ポートフォリオにおいて重視すべき自然関連の依存と影響を特定するため、業種を切り口としたヒートマップを作成しました。①ENCOREによる業種別の依存度・影響度評価、②当社の業種別投資残高、③TNFDにおける優先業種の3点を用いて業種を選別し、重視すべき自然関連リスクの可視化を試みました。

当社の株式・社債ポートフォリオが有する主な自然関連依存と影響のヒートマップ

依存のヒートマップ 影響のヒートマップ

ヒートマップ掲載業種の選別方法:
①ENCOREによる業種別の依存、影響の評価をベースに、各業種の総合的な依存度と影響度を数値化
②上記①の依存度、影響度において上位1/3に該当し、かつ、当社投資残高において上位1/3に該当する業種を特定
③上記②の業種のうち、TNFD「優先業種」に該当するものを選別

依存要素では、電力、食品・飲料、総合石油・ガスなどで、水資源への強い依存が見られます。一方、影響要素では、電力、総合石油・ガス、建設・土木などで、インフラ建設等に伴う陸・淡水・海洋の生態系に対する影響が、また、多くの業種で、水利用や汚染・廃棄物による影響が見て取れ、注視が必要と考えられます。
本分析は一般的な業種像を前提とした初期的段階のものです。分析方法やデータの利用可能性の進展を踏まえ、今後ともTNFDの枠組みに沿ってポートフォリオの有する自然関連リスクと機会の分析を行い、開示していきます。また、分析結果や社会的な要請等を踏まえ、自然関連課題の投資判断への組み込み、投資先企業に対する適切な自然関連エンゲージメントを実施し、自然環境の維持、改善に資する投資を行っていきます。

投資事例

インドネシア共和国が発行したブルーボンドへの投資

世界最大の島しょ国であるインドネシア共和国が発行したブルーボンドへの投資を実施しています。
本債券発行によって調達された資金は、インドネシア政府の定めるブルーエコノミーの発展に貢献するプロジェクトに充当されます。

  • 海洋環境の改善・保全や持続可能な漁業、海洋汚染防止など、水環境が関係する事業に資金用途が限られた債券
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サステナブル・ディベロップメント・ボンドへの投資

人、動物、地球環境における「健康」をひとつと捉え、守っていくワンヘルス・アプローチを支援するサステナブル・ディベロップメント・ボンドへの投資を行っています。

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©米州開発銀行

リスクと影響の管理

当社は、サステナビリティ推進部をリスク評価部、リスク管理統括部をリスク管理総括担当として、生物多様性・自然資本と当社が相互に与える負の影響について、全社的に洗い出し・リスク評価する態勢を整備し、リスク管理委員会に報告しています。今後も年1回以上、リスクの洗い出しおよび評価の継続・高度化を実施するとともに、リスク管理態勢のより一層の定着化を進めていきます。また、本結果はサステナビリティ委員会にもTNFD提言への取り組みの一環として報告しています。

指標と目標

自然への依存・影響、リスク・機会を評価・管理するため、当社はGHG排出量、水使用量、廃棄物排出量、当社施設の延床面積の指標を管理しています。

詳細は、当社の「ESGデータ集(環境)」をご覧ください。

排出の種類 区分 削減目標
中間目標 2050年
事業会社における排出 Scope1 2019年度対比で2030年度までに46%削減 カーボンニュートラル
Scope2
投資ポートフォリオにおける排出※1 Scope3
カテゴリー15
2020年度対比で2029年度末までに50%削減※2
スクロールできます
  • 投融資先企業のScope1およびScope2の排出量について、当社の投資の持ち分比率をかけて算出した値の合計。対象資産は、国内外上場株式および国内外クレジット(企業融資を含む)。
  • 2021年3月末時点での投資ポートフォリオのGHG排出量計測結果を基準とし、2030年3月末時点の計測において50%削減を目標とします。

サステナビリティ

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